精神科Q&A

【0312】新聞紙や拾ってきた物を家にため込む父


Q:  63歳の父が、5年ほど前から、新聞紙や書籍や近所のゴミ捨て場から拾ってきた雑貨(自転車のカゴ数個、棚、ビデオテープ等多岐にわたる。)などを家中に山積みするようになりました。今実家の玄関は人ひとりがようやく通れる幅を除いて、物が山積み。食卓の上にも下にも新聞紙が山積み。居間の少しのスペースを除いて、他の全ての部屋に新聞紙などが山積み。2階へ上がる階段も人ひとり分の幅を残して書籍が山積みです。父の寝ている4畳半の部屋など、足を伸ばして寝れないのでは?と思われる程に布団の周囲に新聞紙・書籍・パンフレット類が高く積まれています。
 父の住まいは長屋のようなタイプの団地で、小さな庭には、会社を退職する際に持ち帰った資料の山が、衣装ケース10箱以上に詰められて何年も山積みです。庭には洗濯物を干せなくなっています。
 父は、5年前に職場(ある大企業でした)を定年より2年早く退職させられ、再就職した矢先に悪性リンパ腫にかかり、再び職場を追われました。その頃から上記の状態が始まりました。リンパ腫で入院中も、ベッドの周囲に書籍類を積み上げていて、6人部屋の中で父の場所はあまりの荷物の多さに異様な雰囲気でした。退職後は、毎晩数時間も新聞の切り抜きをし、3人の子供それぞれの名前を書いた紙袋に仕分けをし、他のパンフレット類などと共に紙袋がたまったら嫌がる私たち子供に無理矢理持ち帰らせます。
 父はもともと生真面目で厳しく癇癪持ちでしたが、退職してからというもの癇癪もひどくなり、大したことでなくても母を怒鳴り散らし、時々怒り任せにカーテンや電気の紐を引きちぎったり、茶碗を割ったりするようになりました。母への直接の暴力こそありませんが、気が弱い母は父が怖くて何も言えない状態です。
 最近では荷物ため込みも癇癪もますますエスカレートして、あまりに病的なので祖母や伯父が受診をすすめましたが、逆に母に八つ当たりします。父は最近胃潰瘍にかかり、自身のストレスの自覚はあるようですが、どんなに周囲から荷物や受診の事を言われても聞き入れません。 私もストレス外来の受診を穏やかに父に勧めましたが、「医者になんか分かるかい!」と言われてしまいました。ゆっくり話し合う事が出来ないのです。リンパ腫の方は全く再発はありませんが、癌への怖れも常々あるようです。
 心の病のように見える父をどうすれば良いものか、母も話すたびに同じ愚痴を数年来こぼしているし、実際実家は気味悪い様子になっているし、困り果てています。どんな対応を取ると突破口が開けるか、アドバイスを頂きたく、メールさせて頂きました。


: なんらかの脳器質性の精神障害だと思います。「脳器質性」というのは、脳内にはっきりした病変が存在することが原因という意味です。
お父様のケースでは、まず第一に考えるべき病変は、悪性リンパ腫によるものです。悪性リンパ腫は、比較的脳内にも病変ができやすい病気です。入院されたときに脳のCTかMRIの検査はされたのでしょうか。もしされていなかったのであれば、すぐに検査すべきですし、もし入院のときに検査したけれど異常がなかったという場合でも、その後の変化の可能性がありますので、やはり検査すべきです。内科の主治医の先生に状況をよくお話したうえで、ご本人にはあくまでも悪性リンパ腫の検査と説明して(しかもこの説明に全く嘘はありません)、脳のMRIの検査をするのが第一だと思います。悪性リンパ腫とは無関係な別の脳病変が見つかることも考えられます。

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