精神科Q&A

【0404】不登校になってから2年間ひきこもっている娘に精神分裂病の疑いはありますか


Q: 17歳の娘は、中3の終わりごろから、学校に行くのがいやで、不登校になりました。原因は、同年代の友達がこわいというか、対人恐怖気味で、話ができないようです。
 今は、ほとんど一日中自分の部屋に引きこもってパソコンに向かっています。パソコンで何をしているかははっきりわからないのですが、インターネットの掲示板に書き込んでいることが多いようです。人と直接会うのがこわいので、コミュニケーションをネットに求めているようにも見えます。それから爪を噛む癖が、小学校6年ごろからはじまり、だんだんひどくなり、両手の爪というか指先まで噛んでいるようです。血が出ていることもよくあります。ひょうそになったこともあります。パソコンをしながら、テレビを見ながら、音楽をききながら、いつも噛んでいます。
 不登校になってから、この2年間で、いろいろな症状が、だんだんひどくなっているのが、気になってきました。
 それは、全体としては、ずぶとくなっているというか、色々なことに無関心になっているのです。
 たとえば、以前は、ご飯の準備など、手伝っていたのに、今は、頼んでも、ほとんどしません。
 朝、遅くまで寝て、晩も遅くまで起きている。というより、ほとんど昼夜が逆転しています。
 お菓子など食べたら、そのゴミを捨てずにそのまま放ってあります。服を脱いだ時も同じです。
こういったことは、何度注意をしても直りません。言われたときは無視したり、返事をするとしても全く気のない返事です。
 パソコンをしていないときは、ぼーっとしながら、爪を噛んでいることが多いです。通信制の高校に通っているのですが、課題の勉強が出来ていません。というより、いくら期限が迫っても、やろうとしないのです。
 家族にはいちおう普通に接しているのですが、外にでたがらないし、人と会いたがらない。友達とか、会話していて、なんといえばいいのか、途中で、ことばがでてこないらしいのです。
 このあいだまで、お医者様もいるカウンセラーにかかっていましたが、爪噛みなどもあり、神経症だといわれていました。
 私も、妄想、幻覚などはないので、精神分裂病ではないと思っていましたが、陰性のものがあると、最近知り、それではないかと、心配しております。
 夫の祖父は、十年以上前に亡くなったのですが、精神分裂病でした。
 娘には、精神分裂病の疑いはあるでしょうか?
 

: 精神分裂病(統合失調症)の疑いが強いと思います。
 
「ひきこもり」という症状の原因は色々あり、単に「不登校でひきこもっている」というだけでは、もちろん精神分裂病ということはできません。
 けれども娘さんの場合、精神分裂病を強く疑う理由があります。それはあなたのおっしゃるところの「ずぶとくなっている」ということです。お書きいただいた、

「以前は、ご飯の準備など、手伝っていたのに、今は、頼んでも、ほとんどしない」
「朝、遅くまで寝て、晩も遅くまで起きている。というより、ほとんど昼夜が逆転しています」
「お菓子など食べたら、そのゴミを捨てずにそのまま放ってあります。服を脱いだ時も同じです」


などは、いずれも人格水準の低下と呼ばれる症状です。
ご指摘のように、これらを陰性症状ということもできます。
 
もちろん、上のようなことのひとつひとつをとってみれば、十代の方には時折見られることです。しかし娘さんの場合、元々の性格からは変化してしまっていること、またそれが長く続いていることは、精神分裂病を疑う根拠になります。
 
それから爪噛みです。爪噛みだけをとってみれば、「神経症」というのが正しいかもしれません。けれども、精神分裂病の初期には、神経症的な症状やうつ病的な症状が見られるのはむしろ普通のことです。
 
最後に、お祖父様が精神分裂病であったことも、重要な根拠になります。(こころの病気の遺伝については【0022】をご覧ください)
 
これらのことは、ひとつひとつを取り上げてみた場合には、病気の症状かどうか何ともいえないということになりますが、総合的に見れば、娘さんは精神分裂病の初期が強く疑われると思います。

 この状態に、幻聴や被害妄想が加われば、診断はほとんど間違いありません。たとえば【0405】の方のようなケースです。
 
もっとも、娘さんの場合、「妄想、幻覚などはない」とのことですが、本当にそれらがないかどうかは、わかりにくいことも多いものです。ずっと後になってからわかることも時々あります(たとえば【0407】)。(ただし、妄想や幻覚の有無をはっきりさせようとして色々尋ねるのは、今は控えたほうがいいと思います。あまり根掘り葉掘り聞きすぎると、悪化させる可能性もあります。妄想や幻覚の有無にかかわらず、娘さんの今の状態は精神分裂病が強く疑われるので、そういうリスクを犯す必要はないでしょう)

 精神分裂病の治療を始めるべきだと思います。(ただしこちらもご覧ください)


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