精神科Q&A
【0055】中年の境界性人格障害は治りますか
Q: 41歳の女性です。私は境界性人格障害です。子供の頃から感じていた苦しさの原因を知るため、インターネットをはじめとして色々勉強した結果、そう確信するに至りました。通常境界性人格障害は若い女性に多いとのことですが、私は既に40歳代です。症状は若い頃からあったのでしょうが、それが改善されないまま年齢を重ねたように思います。結婚し、二人の子供がいます。若い頃よりは若干の改善はみられると思いますが、「深い絶望感」や「激しい見捨てられ感」および「感情の起伏の激しさ」などは、最近になり尚一層、強まっています。そろそろ思春期になる子供達への影響が何より不安です。近くに信頼できる医療機関もありません。
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境界性人格障害は非常に治療が困難であると聞きますが、中年以降でも治る見込みはあるのでしょうか? また、完治は無理でも、生活上で何か対処法あるいは改善策などはないものでしょうか?
林: 普通は、結婚をし、二人のお子様を育てられているという事実があれば、「かなり良くなっている」と判断するところです。この判断はある意味では正しいと思いますが、自覚的にはむしろ症状が強まっているということは何より重視しなければならないでしょう。
残念ながら私は同じようなケースを直接は知りません。ですから、必ずしも的確なお答えができないかもしれませんが、ひとつだけお伝えしたいことは、「境界性人格障害は治療が困難である」というのは、境界性人格障害の中には治療が困難な人が多い、ということであって、すべての人の治療が困難というわけではないということです。
私は、治りやすさ(改善しやすさ)という観点からは、境界性人格障害は2つのグループに分けられると思っています。その2つのグループの大きな違いは、「他人から良い面を吸収できるかどうか」ということだと思います。良い面を吸収できない方のグループの人は、治療がとても難しいです。他人の良い面を受け入れられないので、仮に治療がうまくいっていても、ちょっとしたことで医師をはじめとする自分以外の人に悪意を感じとってしまい、離れてしまうからです。これに対して、良い面を受け入れられる人は、自分の症状や問題を客観的に見ることができますので、自分を変えていくことがかなり可能です。
おそらく、あなたの場合は境界性人格障害といっても、他人の良い面を吸収できるほうの人だと思います。そうでなければ、結婚し、結婚を維持し、子供を育てるということはできないはずですから。
ですから、たとえ色々な自覚症状があっても、自分を見つめることによってもっと改善できるということに自信を持つことが大切だと思います。