精神科Q&A
【0320】高次脳機能障害の認定とリハビリについて(【0314】のその後)
Q: 【0314】交通事故後遺症で高次脳機能障害になったが、IQが高く出たのはなぜか で回答頂き有難うございました。ずーと気になっていた事でしたのでご説明いただいてよく判りました。当事者の主人はやはり回復しがたい状況であると医師から診断はうけ症状固定し、交通事故の後遺症の診断書を自賠責調査事務所に提出いたしました。
検査は他にも受けていました。それはベンダーゲシュタルトテストで、結果は脳器質性障害パターンで細部構造認知の障害と再生不良と私にとっては暗号のようなはじめて聞く言葉でどのような物かわかりませんが、前頭葉の障害であったようです。また、WAIS-RはVIQ86、PIQ74でした。先生の回答にあるウィスコンシンカード分類検査、語産生検査はしていませんでしたので正しく認定されるか心配です。
医師の所見は、「感情の起伏が激しい。短気で易刺激的。遂行機能障害、睡眠障害、自発性、発動性の低下が高度である。判断力低下、計算力、情動変化、人格の低格化(幼児性)が認められる」で、検査所見は、「両側前頭葉の脳挫傷、両側前頭葉から側頭葉の著しい脳機能低下(スペクト所見)」です。
結論的には、高次脳認知機能障害(主体は細部構造認知の視空間認知障害)で日常生活能力を大幅に低下させている、という医師の診断です。
今回お聞きしたいのは次の二点です。
(1) 交通事故で自賠責で高次脳機能障害と認められるか不安です。私自身「高次脳機能障害」という病名は最近知りました。最初は脳性麻痺かと思っていました。症状は重いのですが先生の言う検査をしていませんので正当な評価がされるか非常に不安です。今から再検査必要でしょうか?
(2) どこか主人のような人を診察していただける病院がないか探しています。たとえ地理的に遠方であっても、良い病院があれば連れて行きたいと思いますので、ご紹介いただければ幸いです。
私は主人をもう入院させるつもりはありません。入院する必要もないと思っています。ただ今後の脳のリハビリのようなものが出来るのか。そのようなリハビリがあるのか知りたいです。
林: 詳しく書いていただいたので、ご主人様の症状の全体像はよくわかりました。
WAIS-Rは、VIQ、PIQだけでなく、下位検査の得点もわかればさらに参考になります。けれども、こうした症状の場合、検査成績には検査の時期によってムラがあるのが普通ですので、あまり細かく検討するのは意味がないかもしれません。それに、検査の得点に表れない所見もあるはずで、これは検査を実施した人にお聞きしないとわかりません。
しかし、いずれにせよ、全体像としてはよくわかりました。ご質問へのお答えは以下の通りです:(1) ウィスコンシンカード分類などを施行していないことについて心配されていますが、それについては特に心配はないと思います。これまで施行した検査に十分以上の所見が表れていますので。
仮に、他の検査で全くといっていいほど異常がなく、それでも日常的には確かに障害があるといった場合には、ウィスコンシンカード分類検査のような前頭葉検査が必須になりますが、ご主人様の場合は特に必要ないと思います。
(2) リハビリテーションの方法は、あります。認知リハビリテーションといいます。まだまだ未発達ですが、発展しつつある分野ではあります。
ただし、リハビリテーションというものの性質として、効果がめきめきと現れるというわけにはいきません。また、残念ながら認知リハビリテーションの中でも前頭葉損傷のリハビリテーションは困難な部類に入ります。本人になかなかリハビリテーションの意欲が生まれにくいことがその一因です。長い目で見ることが必要です。
また、リハビリテーションは、遠い施設ではやはり無理でしょう。
長期的に通院できる所を探すことをお奨めします。(2) どこか主人のような人を診察していただける病院がないか探しています。たとえ地理的に遠方であっても、良い病院があれば連れて行きたいと思いますので、ご紹介いただければ幸いです。
せっかくのご依頼にお応えできず恐縮ですが、私のサイトではいかなる紹介も行いません。理由は【0019】の通りです。申し訳ありませんが、ご自分でお探しください。キーワードは認知リハビリテーションです。