精神科Q&A

【0045】  息子を亡くしてから死ぬことばかり考えています


Q: 41歳の女性です。去年の夏に一人息子を交通事故で亡くして以来、死ぬことばかり考えています。感情の起伏が激しくなり、全く眠れない夜もあります。アルコールも相当量飲んでいます。時が経てば癒されるなんてウソです。自分だけで抑える限界だと思います。何科を受診すればいいのでしょうか。

 

林: 最愛の息子さんを急に失われたとのこと、心よりお悔やみを申し上げます。このメールを頂いて私は、ふたつのことを思い出しました。

ひとつは、精神科医になりたてのころに読んだ医学書です。そこには、「愛する人を亡くしたあと、うつ状態が二ヶ月以上続く場合は、うつ病と診断するべきである」という意味のことが書かれてありました。これを読んだ時わたしは、こんな機械的な決め方でいいものだろうかと強く疑問を感じたことを覚えています。人の悲しみはそんなふうに期間だけをもとに診断することができるはずはないと思ったことを覚えています。

もうひとつは、4年ほど前に診療した50歳代の男性のことです。彼は一年前に奥様を癌で亡くされ、その後著しく落ち込んだ状態が続いているということで、まわりの人にすすめられて渋々精神科を受診されました。話をうかがうと、奥様は毎年定期的に検診を受けていたのに、急に癌と診断され、それから2ヶ月ほどで亡くなられたということで、同情の言葉もないような状況でした。ただお話を聞く以外にどうすることもできないような状況でした。アルコールの量も増えていたようでした。それでもとにかく私は抗うつ薬を処方し、毎週診察を続けることにしました。

そうしたところ、意外にも、と言ったら精神科医らしくないと言われそうですが、意外にも週ごとにこの方のうつ状態は良くなっていったのです。

私の話はこれだけです。この方をうつ病と診断すべきかどうか、本当のところは今でもわかりません。ただ、良くなったことは確かです。抗うつ薬は約半年で中止しましたが、その後も前のような激しい落ち込みは見られなくなりました。

あなたも精神科を受診するべきだと思います。   (2001.5.5.)

 

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