精神科Q&A

【0221】セントジョーンズワートの副作用(擬態うつ病、p.149)


Q: 「イチョウの葉」や「セントジョーンズワート」はうつ病に効果があると効きましたが、擬態うつ病の中で否定されていますね。具体的にどのような副作用があるのでしょうか?

: セントジョーンズワートは、擬態うつ病の中では、「うつ病に効くという立証データがある(p.149)」と明記してあります。つまり効果があることを否定してはいません。ただし、私があの本の中で強調したのは、必ず有害な作用もあり得るということです。
 セントジョーンズワートの副作用で比較的頻度の高いものは、性機能障害、頻尿、浮腫などです(下記の文献1)。また、抗うつ薬と一緒に飲むことによって、セロトニン症候群(意識障害など)が起きることがあります(文献2)。いずれにせよ、効果のある薬(これは人工の物でも自然の物でも同じことです)には必ず副作用があるものです。
 なお、セントジョーンズワートが本当にうつ病に有効かどうかは、現在結論を出すべく研究が進められデータが集積されている段階です。抗うつ薬と同じくらい有効というデータもあります(文献3)。いちばん最近のデータは、残念ながら「効かない」というものです(文献2)。しかしこれは将来逆転するかもしれません。
 セントジョーンズワートのうつ病に対する有効性については、まだ結論を出すのは早すぎるでしょう。効くかもしれないし、効かないかもしれません。
 ただし、はっきりしていることは、セントジョーンズワートにも副作用があるということです。繰り返しますが、効く薬には必ず副作用の可能性があるのです。
 また、ぜひ注意して頂きたいことは、たとえ有効だとしても、いま出回っているセントジョーンズワートなるものが有効であるとは考えられません。
 仮に将来セントジョーンズワートの有効性が証明されたとしても(実際、証明されることはあり得ます)、それはある一定の量を一定の期間服用した場合に限ります。でたらめな量で効くとは考えられないし、逆に有害かもしれません。単にセントジョーンズワートを含んでいるというだけで有効ということはあり得ないことです。よく怪しげな製品に、「・・・に有効と科学的に証明された・・・の成分を含んでいる」などと書かれていますが、「有効成分を含んでいる」ということと、その製品が有効か無効かということは全く関係ありません。
 なお、ご質問の中にあるイチョウの葉については擬態うつ病の中には一行も書いてありません。イチョウの葉のエキスがうつ病に有効だという根拠は極めて希薄です。アルツハイマーには有効の可能性がありますが、これも結論は出ていません。なお、イチョウの葉の代表的な副作用として、脳出血があります(文献1)。これはイチョウの葉が血小板活性化因子を阻害するためです。

1
Herb-drug interactions
(by Fugh-Berman A)
Lancet 355: 134-138, 2000

2
Effect of Hypericum perforatum (St John's wort) in major depressive disorder
(by Hypericum depression trial study group)
JAMA 287: 1807-1814, 2002.
(2002年4月10日号)

3
Comparison of St John's wort and imipramine for treating depression: randomised controlled trial. (by Woelk H et al)
British Medical Journal 321: 536-539, 2000.


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