精神科Q&A
【0199】 患者同士のオフ会について
Q: 25歳の妻は今精神科に通院しています。以前から本人が自分のことをあまり話したがら なかったので、詳しい症状は不明ですがパニック発作から始まり、精神科ではうつ状態と診断されたもようです。最近は共依存がどうのと、言っておりました。 本人がインターネットで同じ様な仲間を作った様子で「オフ会」等を行いたい。と 言っています。 私としては、そのような方々と会うことは好ましくないと思うのですが。
:林: 患者さん同士で話し合うことは、プラスになることもマイナスになることもあります。これは、精神医学界では、集団精神療法の意義といったようなテーマで、長年議論されている問題です。ごく簡単に言いますと、プラスの側面は、たとえば当事者でなければわからない問題や、その解決法について情報を交換できるということです。これは、他人や、あるいは医者などにも絶対に提供できないプラスであるといえます。同じような症状の人から話を聞いて、とても心強かったという方はたくさんおられます。マイナスの側面は、端的に言うと他の人の症状を取り入れてしまうことです。話を聞いたばっかりに、新しい症状が出てしまった、聞かなければよかった、という方も少なからずおられます。
その他にもいろいろ議論はあるのですが、普通は患者会や集団精神療法は多くの場合プラスが大きいとされています。ただし注意しなければならないのは、そこには何らかの指導者が必要だということです。医者か、少なくとも一定の医学的知識を持った指導者が必要です。指導者なしですと、話合いが見当違いの方向に進んでしまい、結果的にはマイナスの方が大きくなることになりかねません。
そういう意味では、インターネットでの患者さん同士の掲示板、さらにはオフ会については、かなりの危険をはらんでいると私は思います。あなたの危惧は直感的なものだと思いますが、もっともだと私も思います。この点については擬態うつ病の145ページにも書きました。
ただ、この問題はまだまだ新しいものであり、なんとも言えないところもあります。指導者がいるべきだ、というのも、もしかすると医療者の側からの論理にすぎないのなのかもしれません。ですから、プラス・マイナスのどちらが大きいかについては、今後もっとはっきりしてくることでしょう。といっても、マイナスがゼロということは考えられませんので、それを十分承知しておくことは大切です。
なお、あなたと奥様の件については、ひとつ別の点でひっかかるものがあります。というのは、奥様は夫であるあなたには病状についてあまりお話をされず、ネットで知り合った人の方を頼っておられるということです。そういう状態でさらにオフ会などに出席されるのは、よいこととは到底思えません。現実に目の前にいる人よりも、ネット上の人を信頼するというのは、大きな問題だと思います(以前【0100】誰も信用できず、ネットでしか相談できません(2001.9.5.)というメールを頂いたこともありました)。病気や治療について、まずご夫婦の間で話合われることが第一だと思います。そうしてしっかり地に足をつけたうえで、オフ会にも行かれるというのならそれはいいことかもしれませんが。
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