精神科Q&A
【0028】 診療以外に、保険外の「講義」を受けるように言われたのですが
Q: 33歳の男性です。職場の人間関係が原因で出社拒否になり、一ヶ月前から会社で紹介された精神科に通っています。ところがそこでの診察はいつも1、2分で終わってしまい、一体これで診察になっているのか疑問を感じています。また、その先生の考え方や方針がよくわかるようにという理由で、別のクリニックで保険外(一回五千円)の講義を受けさせれています。この講義は十人から二十人が一緒に受けるのですが、私の症状には関係のなさそうな話ばかりです。この先生の診療を受け続けるべきでしょうか。
林: まず一般論から始めますと、普通の一対一の診療では色々な理由で不十分な時、別の時間にグループの形で医師が説明したり皆で話し合ったりするということは、時々行われています。どうしても普通の診察だけでは時間も限られてしまいますので、本当はそういう形で説明をした方がいいとも言えます。また、そういう機会に患者さん同士で話し合うことができれば、他の人の症状や対応方法を学ぶことができて、大いに参考になることもあります。ただ実際には普通の診療以外にそういう時間を作ることは、医師にとっても患者さんにとってもなかなか難しいため、それほど一般的に行われてはいません。また、私の知っている限りでは、これを行うときは、保険で認められている「集団精神療法」として行っているようです。
あなたの先生の場合は、別のクリニックで保険外の診療として行っているわけですね。まず言えることは、どんな形にせよ、普通の診察以外にも時間を取って診療を行ってくださっているということは、治療熱心な先生であることは確かだということです。それが保険外であっても、別のクリニックで行うぶんには、法律上はなんの問題もありません。(保険診療と保険外診療を使い分けることは、「混合診療」として禁止されていますが、別のクリニックなら問題はありません)
ただし、もしあなたのメールに書かれているように、「保険の診療のほうはいつも1、2分」で、あとはとにかく「講義」を受けるように指示されているのだとすれば、問題があると思います。
もっとも、症状によっては、一対一の診察よりも、講義のような形のほうが有効なこともあり得ます。その場合には、まずは講義の必要性についてよく説明すれば、その後の診察はきわめて短時間というのも正当だと思います。もう一度ふりかえってみて、本当にいつも1、2分なのか、最初に「講義」の必要性について説明を受けなかったか、を思い出してみてください。もし全くそのような説明がなかったら、今の形の診療の必然性は、私にはわかりません。私ならそういう形を取ることは考えませんが、何か私には考えつかないような意味があるのかもしれません。ここから先はご自分でよく考えて、病院をかえるかどうかを決められるべきでしょう。
なお、講義の内容がご自分に関係ないようだ、という点については何とも言えません。症状に何が関係していて何が関係していないかという判断はとても難しいものです。その先生の診療を受け続けるのであれば、必ず何か関係があるはずだと信じてよくお聞きになるべきでしょう。