精神科Q&A
【0131】 20年来通院している母が、全然よくならない
Q: 60歳の母は、20年近く通院してずっと服薬しています。飲んでいる薬は、リーマス、デジレルなどです。
これまでも何度か入院したことがあるのですが、今年に入ってまた精神状態が不安定になり、いったん入院したのですが本人の希望で5日で退院、その直後に自殺未遂で入院、1ヶ月でまた本人の退院、その一週間後突然豹変し手におえないまで感情が乱れ、ある日いなくなったと思ったらまた自殺未遂で入院。入院してからも病院で自殺未遂を図り、現在保護室で身体拘束中です。
20年間も服薬して薬漬けとも思いますし病名もはっきりしませんし、薬が効かないのか、家族関係が複雑だから治らなかったのか、精神療法は必要ないのかという疑問、不安があります。
林: 20年治療を続けてもよくならないということは、病名は難治性のうつ病(または躁うつ病)か、統合失調症(精神分裂病)だと思います。処方されている薬はメールには一部しか書かれていませんので何とも言えませんが、書かれている薬だけからみると、うつ病か躁うつ病なのでしょう。リーマスは普通は躁うつ病の薬として使いますが、難治性のうつ病の場合、抗うつ薬と併用すると有効なことがあります。
ただし以上のことは頂いたメールの情報だけからの推測で、これまでの症状がどのようなものだったか、また「豹変した」というのは具体的にどのような状態だったかということなどにより、判断は変わってきます。
一応ここでは難治性のうつ病だとして話を進めることにします。
長期間服薬を続けてもあまりよくならない、という事だけから考えると、確かに精神療法を行った方がいいのではないかと考えられるのは理解できます。ただこの方の場合、「よくならない」ということの度合いが、激しい自殺未遂(具体的な方法が不明ですが、保護室で拘束される程ですから、相当のものだったと推測されます)がおさまらない、ということのようですので、精神療法では難しいでしょう。こういう方に有効な精神療法を行える医者は、もしかするとどこかにはいるかもしれませんが、普通は精神療法の適応ではないと考えます。強力な薬物療法か、それが無効なら電気けいれん療法を考えるべきでしょう。ご家庭の状況も複雑のようですが、それだけでこれだけ激しい症状が出ることはまずありません。これだけの症状があって、しかも続いている場合、精神療法にあまり過大な期待をかけるべきではないでしょう。