精神科Q&A

【2044】5歳の娘の幻聴


Q: 昨夜寝る前に片方の耳からだれかが怒っている声がすると、5歳の娘がいい、もしかしてと思いメールしました。しばらく耳に手を当てているとすうっと眠ってしまい、声は消えた?と聞くと、目をつむったままうなづきそのまま寝ました。朝になって話を聞くと、まえにも耳からうるさいこえがきこえたことがあるそうです。昨日は小学生の兄をひどくしかったのですが、それを見ている間、娘はずっと泣きそうだったと言いました。私のしかり方が、見ているほかの兄弟にとってもストレスとなっていたとおもいます。ひと月前には、朝からひどく泣いて幼稚園のクラスメイトが自分のお弁当の準備をぐちゃぐちゃにした夢を見たと言いました。一つ一つ話を聞くと現実にはそんな経験もなく、そのお友達もそんな事をしたことがない子だそうで、大丈夫よと言い聞かせました。他にはこの2週間ほど頭痛をよく訴えます。それから一人でお話ししていることも最近よくあり、まだ小さいのであまり気にしていなかったのですが最近のいろいろな出来事が統合失調症の症状なのか、と心配になりました。生後11カ月のころに娘はお風呂でおぼれ意識を失ったことがあります。一時的に脳に酸素がいかなかったのではないかと思われます。病院へ行ったほうがよいのでしょうか?


林: これは幻聴ではありますが、統合失調症の可能性を疑うには無理があります。一つは【2032】でもご説明したように、入眠時幻覚は健康な人にも起こり得ること、もう一つは幻聴の内容が統合失調症らしくないこと(むしろ解離の時に見られる幻聴に近いといえます)です。
他方、5歳というこのご年齢ですと、幻聴の内容を正確に説明することはなかなかできないということもありますので、幻聴の内容から統合失調症らしいか・らしくないかを判断することにも無理があります。

それから一人でお話ししていることも最近よくあり、

おそらく質問者はこれを統合失調症の症状としての独語ではないかと考えておられると推定されますが、これはいわゆる「想像上の友人」と話しているとも考えられ、それは5歳という年齢では特に病的とはいえません。
幼児は架空の誰かと話したり遊んだりすることはよくあり、その場合の「架空の誰か」を「想像上の友人」( imaginary companion; ICと略されることも多いです)といいます。「想像上の友人」は、健康な子どもの発達過程で見られる現象で、病気ではありません。西原理恵子の『いけちゃんとぼく』という作品に出てくる「いけちゃん」は、西原理恵子の息子さんのIC (想像上の友人)を元に作られたキャラクターであることも知られています。
なお、「想像上の友人」については【2052】であらためて解説します。

最近のいろいろな出来事が統合失調症の症状なのか、と心配になりました。

「いろいろな出来事」の具体的内容が不明ですので、これに対しては何もいえません。

生後11カ月のころに娘はお風呂でおぼれ意識を失ったことがあります。一時的に脳に酸素がいかなかったのではないかと思われます。

それが現在の症状に関係している可能性はかなり低いでしょう。

病院へ行ったほうがよいのでしょうか?

もう少し様子を見ていいと思います。
(但し上記の「いろいろな出来事」の具体的内容によっては別の判断になります)

◇ ◇ ◇

【2000】から【2078】までの回答は一連の流れになっています。【2000】、【2001】、・・・【2078】の順にお読みください。


(2011.6.5.)


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