精神科Q&A

【1766】病的に花が嫌いです。人の顔がわかりません。


Q: 30代前半の既婚女性です。 
他の方々の深刻な悩みに比べると私の相談は精神疾患とも言えなさそうなものなのですが、世間には「通常ありえない」と認識されている症状のために日常生活で苦痛を強いられることが非常に多くて長年悩まされております。 

件名にも書きましたとおり、私は病的なまでの花嫌いです。 
特定の花が嫌いなのではなく、全般的に花、もしくは花の形態をしているものに生理的な嫌悪感を覚えます。 
病的に、というのは端的に言うと「花を不潔なものと感じている」ということになります。 
具体的な例を挙げると 

・自分から花に触ることはできない。 
・花の咲き乱れる場所、花屋の前を通り過ぎる時などは呼吸ができない。 
・花を触った人がその手で自分に触れることが生理的に耐えられない。 
・キッチンなど、食物を扱うような場所で花の水を替えたりすることが生理的に耐えられない。 
・花瓶代わりに使った食器などは例え消毒してあっても使用できない。 
・花が触れた箇所に触ることができない。 
・近くに花が飾られていると(その花が視界になくても)そちらばかりが気になって会話や食事に集中できない。 

花に触れると、そこから腐っていくような気分になってしまいます。 
背後など、目の届かない場所にあると、いきなり後ろから襲いかかられそうな気分になります。 
もちろん、花に触れた人体が腐ったり、花が自ら動くことなどありえません。 
現実にそのようなことはありえないのはわかっているのですが、虫を毛嫌いするのと同じような感覚で、花を避けてしまいます。 
虫も決して好きなわけではありませんが、花に触るぐらいならば毛虫に触る方がまだましだとさえ思ってしまいます。 
また、造花であっても同じように拒絶反応が出ます。 
明らかな造り物であっても受けつけません。 
折り紙で折られたチューリップのようなものであればさすがに何も感じませんが、アートフラワーのようなものは偽物だと知っていても(例えば使用されている紙が新聞紙のように、明らかに自然界に存在し得ない色・模様の花であっても)拒絶してしまいます。 
同様に、植物図鑑の写真なども見たくない・触れないという状態です。 
写真でも、触ればそこから腐敗するような気がして、うっかり触ってしまった場合には半泣きで手を洗うはめになります(消毒しよう、とまでは思いませんが)。 

原因は全くわかっておりません。 
母によると、生まれた直後からそのような状態だったと思う、とのことです。 
まだ口の利けない私を友人宅などに連れて行くと突然泣き出す、ということが幾度も重なり、次第に「これは花のそばに連れて行くと泣いているのでは?」と思うようになったそうです。 
妊娠中も含め、特に花で怖い思いをしたこともないと思うのに不思議だ、と言っております。 

物心ついた頃からそのような状態ではありましたが、それでも幼い頃はタンポポやシロツメクサのようにその辺に生えている花であれば花冠などにして遊んだような記憶もあります。 
友達と花の蜜などを吸ったような記憶も、曖昧ながらあります。 
年を取るにつれてどんどんその重症度が増して、全ての花が嫌だと感じるようになってしまいましたが、それも幼い頃は触ることのできたミミズやバッタなどの昆虫を触れなくなってしまったのと同じ程度の自然な変化だったと自分では思っております。 

精神的に何か問題があるのでは?と言われたこともありますが、個人的には「虫が嫌いな人もいれば花が嫌いな人もいるだろう」という気持ちでおります。 
ただ、虫と違って花の場合には「花が嫌いな人はいない(少ない)」という考え方が一般的なようで、日常生活で不便と苦痛を強いられる場面が多々あります。 
バスや地下鉄などで花束を抱えた方がそばに来ると、表面には出しませんが内心ではパニック状態になり、混雑していてもその場から少しでも遠ざかろうと他人をかき分けて逃げ出してしまいます。 
喫茶店やレストランなどではテーブルやトイレに花が飾られていることもよくあり、内装を見て無理だと判断し、そのお店を出てしまうこともあります。 
親しい友人と一緒の時にはさりげなくお花を遠くに避けてもらったり、「ここのトイレにお花があったよ」とあらかじめ伝えてもらうことで衝撃を緩和できますが、狭い空間で花に対峙した時にはかなりの精神的なショックがあります。 
逃げ場のない場所でゴキブリに遭遇した気分とでもいいますか… 
他人から理解を得られないことも多く、中には面と向かって「花が嫌いな人間なんてありえない」と、私の発言を嘘だと決めつけられることもあって、そのことにも苦痛を感じます。 

私は病気なのでしょうか? 
病気だとすれば、なんらかの治療を受ければこのような症状は改善されるのでしょうか? 

また、上記のことに関係があるかどうかは全くわかりませんが、私も【0683】の方のように他人の顔を覚えることが苦手です。 
【0683】の方は家族や友人の顔は覚えていらっしゃるようですが、私はそれすらも曖昧で、記憶にある限りでは 

・友人二人(他の人の話では特に似ているわけではないらしい)の区別がつかず、よく見間違える。 
・付き合っていた恋人といつもとは違う場所で待ち合わせたら、彼が目の前に立っていても気づかなかった。 
・同棲中の恋人が散髪中に単独で行動し、待ち合わせ場所へ行ったら彼を見つけられなかった。  (事前に彼が髪型を変えることはわかっていたのに) 
・同居している姉と本屋で待ち合わせると、常に違う女性を姉だと思い込んでしまう。 
 (いつも確信が持てず声をかけようかどうか悩んでいると、本物の姉が私を見つけてくれて間違いに気づく) 
・地下鉄の座席で、目の前に座っている女性が自分の母に見える。 
 (母がそこにいるはずはなく、私に気づかないはずもないので勘違いなのだろうと判断) 
・同じ職場(学校)の人と、全く関係のない場所で会うと知人だと認識できない。 
 (後日、目が合ったのに無視されたと言われて初めて気づくが、思い出せない) 

というようなことがあります。 
芸能人も見分けるのが苦手で、どちらかというと顔よりも雰囲気で見分けている節があります。 
そのため、長い黒髪・お嬢様風の雰囲気・和風のイメージ、などのように大まかな印象の重なる芸能人(例:松たか子・松嶋菜々子、竹内結子)などは区別がつかないことが多く、みな同じ人に見えてしまいます。 
そして、私が「見分けがつかない」という人たちは、他の人から見ると「似ていない」ことが多いのが特徴のようです。 
同じお店の店員さんなどは、制服や営業口調が同じためか区別がつかないことがほとんどで、年齢の違いなども考慮せず混同してしまっていることが多いようです。 
その代わり声の聞き分けは人よりは得意な方で、いつもお互いに間違えられて困るという取引先の女性二人の声を難なく聞き分けることもできていました。 
また、妙な話なのですが、顔つきでは全くわからなかったのに体つきを見たとたんにわかった、ということもあります。 
現在の夫は後ろ姿や首から下を見ればほぼ一目でわかります。 
他にも、顔も名前も覚えていなかった女性を体つきで思い出したという経験もありました。 

私の場合は大学生ぐらいまでそういった自覚はなかったので先天的なものか後天的なものかはわかりませんが、今ははっきりと「おかしい」と感じております。 
大学生ぐらいまで自覚がなかった理由としては、だいたい三年ぐらいの周期で転校していたこと、その三年の間に進学などがあり、周囲の人間の顔ぶれがしょっちゅう入れ替わっていたことがあると思います。 
記憶力自体は決して悪い方ではなく、転校して一ヶ月ほどでクラス全員を覚えることができていました。 
ただ、この件に関しては私が「覚えられた」と思い込んでいただけなのだと思います。 
そう判断する理由としては、大学一年の時に偶然出あった高校時代の元同級生のことを「同じクラスになったことのある人だと認識しながらも、どちらの高校で同級生だったかわからず、名前も思い出せなかった」ことにあります。 
私は高校三年の春に転校し、二つの高校に通いました。 
この時に初めて「卒業して一年も経過していないのに…と」自分の記憶力に不安を抱きました。 
どちらの高校も私服であったため、制服のイメージで記憶に焼き付けることができなかったことも「どちらの学校で」と判断できなかったことと関係しているかもしれません。 

この件に関しては「自分はそういう人間なのだ」ということで、多少不便は感じており、治るものならば治したいとも思っていますが、治らないならそれはそれで仕方がないという程度に受け止めております。 
ただ、もしも「花が嫌い」ということに何か繋がるのであれば…と思い、蛇足とは思いながらも記載させていただきました。 

長々と失礼致しました。 
自分の頭の中で整理のつかないままに書いているため、伝わらない部分も多いかと思います。 
この件に関する回答の有無に関係なく、このメールをここまで読んでいただけたというだけで感謝の気持ちでいっぱいです。


林: 
私も【0683】の方のように他人の顔を覚えることが苦手です。 

これについては、お書きいただいた具体的な症状から、先天性相貌失認 (発達性相貌失認 = developmental prosopagnosia) であると判断できます。今回の更新(2010.7.5.)の【1763】の回答で比較的詳しく説明しましたのでご参照ください。

一方、ご質問の中心事項である、花が嫌いという点については、申し訳ないのですが有効な回答ができません。
診断をつけるだけなら簡単で、「特定の恐怖症」で、その対象が「花」ということになります。「特定の恐怖症」とは、何か特定の物を強く恐怖するというもので、蜘蛛、高所などがその「特定の物」(対象) の典型的な例です。他にも対象となる物はたくさん知られていますが、「花」というのは、臨床的にも、また、文献的にも、私は一例も知りません。この【1766】が、単に、「花を対象とする稀な恐怖症」という診断でいいのか、それとも恐怖症とは別種のものと考えるべきか、残念ながら私にはわかりません。
先天性相貌失認の合併は、正しい診断に到達する重要な情報である可能性はあります。【1763】にも解説したとおり、先天性相貌失認には様々な合併症があります。しかし恐怖症の合併は、私の知る限りでは、存在しません。先天性相貌失認に比較的合併率が高いものとして広汎性発達障害があり、広汎性発達障害の症状の一つとして強迫があり、恐怖症は強迫の一つの表れとみることができる、というふうに結びつけることは不可能ではありませんが、どちらかというとこじつけの範囲内になるでしょう。
 
 以上の通り、せっかくご質問いただいたのにもかかわらず、有効な回答ができず申し訳ありません。今後、何かわかりましたら追加で回答いたしますが、現時点ではここまでしかわかりません。




精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る