精神科Q&A

【1749】夫はうつ病と診断されていますが,ほんとうにそうなのか疑問に思うところもあります


Q: 夫39歳,子どもが一人(3歳)います。 夫は,うつ病と診断され,もう職場を休んで7ヶ月目に入りました。夫は,バツイチで,前妻との間に2人の子どもがいました。離婚の原因の一つに,うつ病があったようです。私と結婚してからも,うつ病を何度も再発し,何度も職場を長期に休んでいます。主治医の先生と合わないという理由から,病院を変わったこともあります。 うつ病の症状である,夜眠れない,朝起きられない,職場に行けない,吐き気,下痢,多汗症などあるのですが,ほんとうにうつ病なのかと疑問に思う様子もたくさんあり,先生のホームページで擬態うつ病を知り,夫の場合はどうなのかお聞きしたいと思いました。
 私がほんとうに夫がうつ病なのかと疑問に思う点は,
1 起きている間中,ネットやゲームをしていること。
2 私とは話さないし,職場の上司から電話がかかってきても出ないのに,友人からかかってきた電話には出て,普通に話していること。
3 病院を受診しにいくときは(受診するには,遠出をしなければならないのですが),必ずと言っていいほど,友人と,女の子のいるお店に飲みに行くこと。
4 主治医の先生に止められているにもかかわらず,薬を服用しながら,お酒も飲んでいること。(薬だけでは,眠れないという理由で)
5 昼間は一切外に出ないのに,たばことお酒は,夜に自分で買いにいけること。
6 (私に隠れて)ネットなどで知り合った女の子とチャットをしたり,メールをしたりしていること。
7 車やバイクに興味があり,バイクの車検などきちんと受けて,たまには友人とツーリングに出かけること。
8 自殺願望がないということ。
以上のことから,だんだん擬態うつ病ではないかと思えてきました。
1ヶ月ごとに病院を受診し,休職期間を延ばしてきたのですが,少しよくなってきたのかなと思っていても,病院受診の日が迫ってくると,急に悪くなるような気がします。今の病院に一度だけ同伴して行ったことがあるのですが,主治医の前では,本当に症状が悪いように見え,声が小さくなったり,無口になったりしていました。主治医の先生は,とてもいい先生で,よく話も聞いてくれ,親身になって診察をしてくれます。おそらく,夫の話をよく信じていると思います。私が,家での様子や,普段の様子を話したら,何かかわるのかと思いますが,本人でない私の話を本人がいないところで話をしてもいいのか,わかりません。 今は,離婚も考えたりしていますが,病気は治るものだからと思い直したりもしています。ただ,擬態うつ病なら治りませんよね? だとするとそれも心配です。 


林: これは擬態うつ病です。今の治療では治りません。

主治医の先生は,とてもいい先生で,よく話も聞いてくれ,親身になって診察をしてくれます。

いい医師かどうか。それは、治すことができるかどうかです。話をよく聞いてくれるとか、親身になって診察をしてくれるとかいうことは、医師としての良し悪しには必ずしも関係 しません。治す医師が良い医師。その他の基準はナンセンスです。

主治医の先生と合わないという理由から,病院を変わったこともあります。

そのときの主治医の先生ほうが、今の主治医の先生より良い医師だった可能性もかなりあると思います。この【1749】のような擬態うつ病の人に、ただよく話を聞き、親身になるだけでは、逆に回復を阻むことが多いからです。

私が,家での様子や,普段の様子を話したら,何かかわるのかと思いますが,本人でない私の話を本人がいないところで話をしてもいいのか,わかりません。

本人の了承を得たうえで、あなたが医師に伝えるべきです。
というより、医師のほうから、もっと前に、妻であるあなたの話を聞いたうえで、病状を判断すべきと言えます。

ただ,擬態うつ病なら治りませんよね? 

それはあなたの認識の誤りです。擬態うつ病は、うつ病の治療をしても治りませんが、「擬態うつ病なら治らない」というのは誤りです。ではどうすれば治るか。それは一般化して答えることはできません。擬態うつ病とは、うつ病に似て非なるものですから、その中にはさまざまなものが含まれ、対応法はひとつではないからです。この【1749】のケースは、性格によるところが大きいと思われますので、医療による対応は適切でないかもしれません。にもかかわらず、医師が「親身に」診察することで、かえって長引かせている可能性が大きいと思います。



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