精神科Q&A

【1746】PTSDの症状をもつことは意思が弱いことと関係ありますか


Q: 私は現在22歳の大学生です。 
私は小学校5年生の時に阪神大震災を経験しました。住んでいた場所が伊丹市だったので震度7ほどの揺れを体験しました。 
直後はよく地震の夢を見たりしましたが、10年以上経った現在では夢をみたり、といったことはほとんどなく日常生活には特になんの問題もありません。 
しかし、ひとたび地震を体に感じると体が硬直して自分で動かそうと思っても全く動きません。 最低でも10分間は全く動けず、さらに、揺れが強かったりすると30分以上動けず、呼吸が荒くなり、悲しいわけでもないのになぜか涙がでてきます。 これはPTSDなんでしょうか?? 
日常生活には特に問題ないので病院へは行ったことがないのですが、自分ではもしかしてPTSDかもと思っています。 

それと、親の前でそのような症状になった時、父親に「怖がってる場合じゃない。地震だと思ったらまず逃げることをしなければ生きられない」と言われました。 
確かに、生きるためには逃げなければと思うのですが体がいうことを聞いてくれません。 
なので、体が硬直するのを治したいと思いましたが自分は何をすればいいのかわかりません。 

そこで考えたのが、自分の意思が弱いからこのような症状を起こすのではないかと思いました。 
しっかりとした意思を持っていれば自分の精神をコントロールでききちんと対処できるのではないかと思いました。 
PTSDの症状をもつことは意思が弱いことと関係あるのでしょうか? 
また、同じ体験をしたにもかかわらずPTSDの症状をもつ人と持たない人では何が違うのでしょうか? 


林: PTSDの原因はトラウマです。けれども、同じトラウマ体験をした人が等しくPTSDになるわけではありません。また、PTSDになった後の経過も人によって違います。ということは、PTSDになりやすい・なりにくいという個人差があることは確かで、その個人差の少なくとも一部は脳内にあるはずで、それを明らかにしようとする研究は膨大に存在します。この【1746】のご質問はまさにそれに関係したものです。けれども、

PTSDの症状をもつことは意思が弱いことと関係あるのでしょうか?

いいえ、「意思」という漠然としたものと関係があるとはいえません。
PTSDに限らず、心の病については、「強い意思があれば克服できる」などと言われることが多いのですが、真実はそのようなものではなく、もっと具体的なメカニズムがあります。

また、同じ体験をしたにもかかわらずPTSDの症状をもつ人と持たない人では何が違うのでしょうか? 

トラウマに対するホルモン(グルココルチコイド: ステロイドホルモンの一つです)の反応、元々の海馬の大きさ、海馬のホルモンに対する反応、扁桃体の反応などが、PTSDと関係する神経生物学的な事象です。さらには、対人関係やサポートの度合いも関係していると思われます。代表的な論文をご紹介しておきます。



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