精神科Q&A

【1742】母は突然自殺してしまいました(【0670】のその後)


Q【0670】69歳の母は脳梗塞か痴呆か甲状腺障害か統合失調症か で、ご回答頂いたものです。その節はありがとうございました。 その後、母を病院に強制入院させ、母自身も統合失調症という病気と向き合って生活していました。翌年に母の兄弟とのいざこざがあり、心臓が苦しくなる等の症状が出て、一度再入院しましたが、その後はきちんと自らすすんで病院へ通い、薬もきちんと飲んでいました。 薬を飲んでいても、春や秋の季節の変わり目には、体調を崩していたように思います。一昨年、白内障の手術を受け、その際に病院でせん妄を起こしてから、すっかり一人暮らしに自信を失い、離れた町にすんでいる私と同居する事になりました。親子といえども、随分と長い間別々に暮らしていた者同士の同居は、お互いにストレスがたまる部分も多々あったと思いますが、母も新しい土地に慣れて来て、ご近所付き合いも少しずつしていたように思っていました。
そんな矢先、突然、母が自殺してしまいました。 一緒に暮らしていたのに、私には、母がそんな行動に出る予兆みたいなものを、全く感じ取る事ができませんでした。クリスマスプレゼントにセーターを買ってあげた時も喜んでいて「正月に着るのでとって置く」やクリスマスケーキを買って来てというので買ってあげたら、いっぺんに2個も食べて「あぁ、おいしい」と何度も感嘆の声をあげながら食べていた事が思い出されます。 先生。統合失調症という病気は、こんな風にある日突然、死にたくなってしまうものなのでしょうか。それとも、ずっと死にたくて死にたくてしょうがない状態のまま、我慢していただけなのでしょうか。 私は子供の頃から、母の病気と向き合って来ました。そして、母に対しては通常の親とは別の気遣いもしてきたつもりでした。でも、こんな結果になり、私は母の為に何をして来たのだろう、何も理解していなかったのでは、という気持ちで一杯です。 同じ病気を抱えるご家族の皆様にも、母のような事が無いようにと思い、ご連絡させて頂きます。 先生、本当にありがとうございました。


林: 経過のご報告を、それも大変残念な経過のご報告であるにもかかわらず、ご丁寧なメールでいただきありがとうございました。

母を病院に強制入院させ、母自身も統合失調症という病気と向き合って生活していました。

とあっさり書いておられますが、強制入院に踏み切るまでには、そしてそれを実行するには、大変なご苦労があったとお察し申し上げます。入院の効果は十分に認められたと読み取れますので、そのご苦労が報われ、ご家族も、またご本人も、大いに喜ばれたことと思います。
しかしながら、


そんな矢先、突然、母が自殺してしまいました。

このような結果になり、驚愕され、そして落胆されたことをお察し申し上げます。
そして、ご家族として、その理由をあれこれお考えになるのは当然と思います。

先生。統合失調症という病気は、こんな風にある日突然、死にたくなってしまうものなのでしょうか。それとも、ずっと死にたくて死にたくてしょうがない状態のまま、我慢していただけなのでしょうか。

このようなご質問に対し、たとえお答えできたしてももはや何もならないかもしれません。けれども、お答えすれば何らかの納得は得られるかもしれず、また、今後、同じようなケースにおいて、自殺を予防するヒントになるでしょう。
 しかし、残念ながら、このご質問に対する答えは、「わかりません」と言わざるを得ません。
 統合失調症という病気では、ある日突然、全く予想もつかない行動が取られることがある。事実として言えるのはそれだけです。
それからもうひとつ、このような全く予想もつかない行動は、治療をしていない場合のほうが、治療をしている場合よりもはるかに多いということも言えます。ですから、この【1742】のようなケースは、率としては少ないものです。当事者である【1742】の質問者にとっては、そんな確率論を説明されても何もならないと感じられるとは思いますが、現時点の精神医学で言えるのはこの確率論までにとどまります。

同じ病気を抱えるご家族の皆様にも、母のような事が無いようにと思い、ご連絡させて頂きます。

そのお気持ちには深く感謝申し上げます。しかし残念ながら、今回の【1742】のご報告から、同じ病気を抱えるご家族の方々へお伝えできるメッセージとしては、「統合失調症では、このような予期せぬ自殺があり得る」ということにとどまると言わざるを得ません。そして、そのように言わざるを得ないのは、精神医学が、統合失調症という病気をまだまだ十分に解明していないことが原因です。精神科医としては、統合失調症についての研究をさらに一層進めていく必要があると再認識しなければならないとあらためて思います。



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