精神科Q&A

【1659】小学5年生の息子は広汎性発達障害でしょうか。電話相談では心配ないと言われたのですが。


Q: 11歳の息子について、ご相談申し上げます。身体は同じ年齢の子供に比べると、小さいころから常に10 cmくらい背が高く、でも細身な子です。
 分娩時、少し時間がかかってしまい、心音が弱まってきていたため、おなかを絞るように押し出しての出産でした。
 運動をすると手足動きが非常に鈍く、ボールのキャッチ、キックが上手くできかねます。ただ、人に追いかけられると、逃げ足はかなり速いです(直線的な走りですが)。
 小さいころから、小石や葉っぱ、ボルトなど、道端に落ちているいわゆるゴミを毎日のようにポケットに入れて帰ってきます(最近は、回数が激減)。
 お友達とは友人関係が作れており、学校では集団遊びをしたり、帰宅後お友達のおうちへ遊びに出かけます。しかし、学校でお友達とケンカをした時は、気持ちがエスカレートしてしまい、手当たり次第物を投げつけたりすることがあるようです(これも学年が上がるごとに回数が減っているようです)。
うちでは、いつも同じビデオ(同じ場面)を繰り返しみたり、好きなアニメ(ドラゴンボールやガンダムなど)を飽きることなく見続けています。
 また、日常生活やビデオなどで特定の場面になると、それにまつわる話を何度も必ずします。(車内でCDを聞いていても、ある音楽がかかると、それにまつわる話を必ずします)。
 常同行動があります。アニメなどで戦闘場面があったり、自分が興奮することがあると、ぴょんぴょん跳ね、同時に手をひらひら・パタパタ(?)させます。時には、コタツの中で足をバタバタさせます。
 滑舌がよくなく、何を話しているのか不明なことがよくあります。特に、サ行とラ行が聞き取りにくいです。
 モノをよく壊します。傘、筆箱・洋服・かばんのファスナーなどが多いです。無理に引っ張ったり、こうしたら壊れるということがその瞬間に判断できないのだと思います。
 学力はレベルは、一般的な児童と同じか、やや劣る程度と思います。

 以前、某大学の児童心理臨床センターのようなところでこのような内容を電話相談をしたところ、3人兄弟(男・男・女)の真ん中にありがちな子で、成長する時間の流れも個人差があり、彼は緩やかな成長なのでしょう、という回答でした。
 しかし、私たち夫婦には、依然として彼が何らかの発達障害を持っているのでは…という気持ちが消えません。いっそのこと、発達障害と診断された方がどれほど救われるか…。


林: すでに専門家に電話で直接相談され、発達障害を否定されたのであれば、メールで同じ内容を私に相談することにあまり意味はないと思います。メールと電話を比較すると、電話のほうがコミュニケーションの手段としては直接に近いので、メールの情報から電話相談を超える回答はできないと思います。

・・・とお答えしたいところですが、このメールの内容からは、アスペルガー障害などの発達障害の疑いは残ります。電話相談のときに、本当にこれらの内容をすべてお伝えしたのでしょうか。そうであれば、「一度診察を受けたほうがいい」という回答が期待できるところで、これは

彼は緩やかな成長なのでしょう

と断言するのは疑問です。なぜならこのメールに書かれている内容は、「成長の遅れ」とは質の違うものだからです。(たとえば、言葉や運動の機能が、平均の成長曲線よりやや遅れているというものであれば、「この程度の遅れは心配するに値しないので様子を見ていて差し支えない」という回答は合理的なものですが、この【1659】に関してはそうは言い切れません)
 具体的には、

 運動をすると手足動きが非常に鈍く、

 常同行動があります。アニメなどで戦闘場面があったり、自分が興奮することがあると、ぴょんぴょん跳ね、同時に手をひらひら・パタパタ(?)させます。時には、コタツの中で足をバタバタさせます。

これらは、発達障害の可能性を考えるべき特徴です。もちろん【1658】でも述べたように、こうした「症状」は程度問題であって、発達障害に似た特徴があるからといって、それは「症状」といえるとは限りません。つまりこの例でいえば、「非常に鈍く」の「非常に」とはどの程度か、「ぴょんぴょん跳ね、同時に手をひらひら・・・」などは、「常同行為」といえるほどのものなのか、などの問題が残ります。(電話相談で、これらについて具体的な説明を求められ、その説明を聴いたうえで「心配ない」と判断されたのならそれはそれで納得できるところではあります)

また、

うちでは、いつも同じビデオ(同じ場面)を繰り返しみたり、好きなアニメ(ドラゴンボールやガンダムなど)を飽きることなく見続けています。
 また、日常生活やビデオなどで特定の場面になると、それにまつわる話を何度も必ずします。(車内でCDを聞いていても、ある音楽がかかると、それにまつわる話を必ずします)。


これも発達障害の可能性を考えるべき特徴です。ただしやはり程度問題ではあります。また、「特定の場面」とは具体的にどのような場面かも重要な情報です。発達障害の子どもが興味を持ちやすい「特定の場面」については、こちらもご参照ください。

 しかし、私たち夫婦には、依然として彼が何らかの発達障害を持っているのでは…という気持ちが消えません。

以上の回答と息子さんの現状を照らし合わせ、やはり疑問が残るのであれば、受診すべきです。

いっそのこと、発達障害と診断された方がどれほど救われるか…。

それはまた別の問題ですが、発達障害であれば、早期からそれにあわせた養育をすることが望まれますので、診断を確定することには大きな意味があります。


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