精神科Q&A

【1584】精神病らしい彼女が倒れたのは私の接し方が悪かったのでしょうか


Q:  私の知り合いで、20代前半の女性がいます。初めてあった頃には何ら変わりなく感じられました。まだ知り合って半年経つかといった期間ですが、ここ最近一緒にいることが多くなり私に心を開いてくれたのか精神病である事を打ち明けてくれました。しかし病院には前に行ったきりで通院しておらず薬だけは処方して貰っているようです。本人はうつ病だと診断されたが統合失調症の可能性もあると先生に言われたそうです。私自身、精神病と言われても何も付き合いが変わるものではないと思っていますし話を聞いてからも何も気を使わず接していました。しかしここ一月の間で2回倒れ、つい最近は救急車を呼ばざるを得ない状況になってしまいました。私の対応が悪かったのかと考えていますが日常生活においての対応が分からずご連絡差し上げました。女性の症状をまずお知らせします。 ・幻覚、幻聴が常にあり複数人の自分がいる感じがする ・一人でいると寝るのが怖く誰かと一緒じゃないと恐怖を感じる ・食事をとる日がまちまちで差が激しい・皆に利用されていると考えている・統合失調症かもしれないのを認めたくなく普通だと思おうとする・ちょっと疲れたり嫌な事があれば現実逃避して自分の殻に閉じこもる 
大体こんな感じですがこれは本人が言っていたもので、次に私が客観的に見た意見を書きます。 ・自分の行動や存在自体に迷惑をかけていると考えている・日常会話でも話が矛盾している事が多々ある(これは人には誰しも多少あるものですし余りにも酷い矛盾点はありません)・表情が乏しく笑い話が好きでない。冗談が嫌い。・普段はよく喋るし社交的である。外出するのが好きなほう。・何か話で引っかかる事があると目付きが変わる これは私が感じた事ですが私自身、観察力に乏しいため主だった事のみ書きました。しかし一番気になるのは先に述べたとおり2回倒れたとありましたが2回とも就寝し起そうとするとそのまま気を失っているような状態になりいくら起そうが気絶したようで起きない事です。ごく稀になるそうなのですが私といるこの数週間で2回なっているので原因は私の接し方にあると思います。私は病気なら病気で受け入れて治療し気にする事なんかないと言い、本人が落ち込んでいる時など喜ばそうと話をするのですがそれすら意味が分からずつらいようです。本人自身は非常に頭がよくて勉強なども私より遥かに出来ると思います。私の病気に対する認識が欠けていたせいで病に対する禁句(頑張れ、など)を出していたのだと思います。私は出来るだけの協力をして行きたく思っていますのでまず先生からみて考えられる病名は何でしょうか? また、その考えられる病気に対する対応や言ってはいけない言葉など、またこういう対応をとればいいという事などがありましたら教えていただきたく思っています。長文で失礼しました。宜しくお願いいたします。


林: ご友人への配慮の気持ちがよく読み取れるメールだと思います。精神病のご友人への接し方としては、

私自身、精神病と言われても何も付き合いが変わるものではないと思っていますし話を聞いてからも何も気を使わず接していました。

これが基本的には正しいと思います。
しかし現実には、「何も気を使わず」といったものの、どうしてもそれではしっくりといかない事が出てくるのは避けられず、そうしますとこの【1584】の質問者のような悩みが出てくるものです。そこで、出来るだけお答えしたいと思うのですが、

私は出来るだけの協力をして行きたく思っていますのでまず先生からみて考えられる病名は何でしょうか? 

残念ながら、まずここからしてわかりません。理由は、症状が具体的に記されていないからです。
記されているではないか、とお思いの読者もいらっしゃるかもしれませんが、このメールに書かれている症状は、ほとんどが抽象的なもので、判断の材料にはなりにくいものばかりです。たとえば

・幻覚、幻聴が常にあり複数人の自分がいる感じがする

「幻覚」「幻聴」、このような用語のみで書かれていても、精神科的な診断価値はほとんどありません。その内容は具体的にはどのようなものなのか。「幻覚」(「幻聴」も幻覚に含まれます)とは、結局は主観的な体験にすぎず、その内容は厳密には本人以外には知ることはできません。それでもその体験に接近するためには、本人がそれをどのような言葉で語っているかが重要な情報です。ですから、本人の言葉そのものが書かれているのが、精神科の診断のためには最も有用です。「複数人の自分がいる感じがする」というのも微妙な表現で、より具体的に本人がどう語っているかが重要です。

・日常会話でも話が矛盾している事が多々ある(これは人には誰しも多少あるものですし余りにも酷い矛盾点はありません)

残念ながらこれもわかりません。何がどう矛盾しているのか。その具体的な内容が不明ですので、精神科の診断にはほとんど役に立ちません。もっとはっきり言えば、話に矛盾が「人には誰しも多少ある」のは当然ですから、このような記載は何も書いていないのと同じです。

そこで、診断は棚上げにする以外にありませんので、対応に関してですが、

しかしここ一月の間で2回倒れ、つい最近は救急車を呼ばざるを得ない状況になってしまいました。私の対応が悪かったのかと考えていますが

私といるこの数週間で2回なっているので原因は私の接し方にあると思います。

「自分といるときに2回倒れた」ことを質問者は重視しておられます。
しかしながら、他のときに本当に倒れていないのか、それがわからなければ、この情報にもやはりあまり意味がないと言わざるを得ません。
また、他のときには倒れていないと過程した場合、では質問者といるときにのみ倒れたことの意味を推測してみますと、

・質問者の接し方が悪かった
・質問者への依存性の表れ (つまり、気を引くために倒れた・・・意識的か無意識的かは別です)
・質問者とは無関係(つまり、偶然)

などが考えられます。したがって、この事実をもって直ちに、自分の接し方についてあれこれお考えになるのはどうかということになります。

私の病気に対する認識が欠けていたせいで病に対する禁句(頑張れ、など)を出していたのだと思います。

「病に対する禁句」というもの、つまり、どんな病にも共通する禁句は存在しませんので、「私の病気に対する認識が欠けていた」という以前に、そのような禁句が存在するという認識のほうをあらためる必要があります。「頑張れ」などの激励が望ましくないというのは、うつ病(擬態うつ病を除いた、本物のうつ病)に限ってはある程度までは正しいことですが、それ以上でもそれ以下でもありません。

結論としては、この【1584】で質問者にできること、そして最も有意義なことは、

しかし病院には前に行ったきりで通院しておらず薬だけは処方して貰っているようです。

 このように薬だけを処方してもらうのではなく、きちんと通院して治療を受けるよう勧めることです。
病気のご友人に対して、何が自分でできることをしたい、それはもちろん望ましいことです。けれども他方で、【1582】にも共通することですが、自分で出来ることには限界があることを認識しなければなりせん。体の重い病気や大きなケガなどと違って、心の病は、友人として心をつくせばそれだけで治るように思ってしまうこともありがちです。しかしそれは大部分の場合誤りです。さらにいえば、ネットなどで人に相談すれば良い方法がみつかると考えるのも同様に誤りです。病気は病院での治療が必要。この基本的な事実を忘れてはいけません。


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