精神科Q&A

【1582】リストカットする友人の力になりたい


Q: 高校で出会った彼女は、大人しそうな子でした。いかにも普通の子で仲のよい友人たちとよく楽しそうにしていました。彼女とは同じ部活なので色々と話していました。そこからも変わった印象は一切ありませんでした。
 しかし秋頃から親に対する不満(門限が厳しい、過保護すぎる等)を理由に、リストカットをするようになりました。特にひどかったのが、彼女が携帯電話を親に取り上げられたときでした。「血が腕から滴ると落ち着く。」と彼女は言っていました。このことについては周りも知っていて、先生が、彼女の親と話し合ったことで一旦解決しました。彼女は一人部屋をもらい、携帯も返してもらったことで、すべては円満解決したかのように見えました。(年明け直後の話です) そこから一週間。彼女から、「リストカットを見てほしい」というメールが来ました。(中学時代にリストカットしていた友人がいた私なら理解してくれると思ったそうです。)戸惑いながらも、彼女が極力、リストカットをやめるように動いたつもりでした。そのかいもあってか、一時的なものでしたがリストカットもやみ、嬉しそうに綺麗になりかけた腕をみせてくれました。
数週間たち、余り連絡を取らなりホッとしたのも束の間。彼女のリストカットがまたもや再発したのです。その上、部活に来ても、更衣室に蹲っていたり、倒れたと思ったらそのまま起き上がらず部活が終わるまでベンチで寝ていた事もありました。しかし、それ以外のときは友人と楽しそうに話しているのです。突発的にスイッチが切れたかのようにぱたりと動かなくなったり、無気力状態になってしまうのです。挙句の果てには部活にこなくなり、連絡しても、「行きたくてもいけなかった」等とちぐはぐにされます。 最近は彼女と再び連絡を取るようになりましたが、今までと比べ、非常に内容が異様で、携帯の画面いっぱいに「死にたい」と写ることも珍しくありません。このままでは自分もおかしくなってしまいそうです。 ここで質問なんですが、
1.彼女は何かの病気なんでしょうか? 
2.自分にできることは何かあるのでしょうか。
一時でも彼女に頼りにされたからには、元気になるまで責任を持ちたいのです。 どうか返答をお願いします。


林: 
1.彼女は何かの病気なんでしょうか? 

このメールの内容からだけでは何とも言えません。リストカットが再発したきっかけは何か。そもそも何かきっかけがあったのかなかったのか。また、

突発的にスイッチが切れたかのようにぱたりと動かなくなったり、無気力状態になってしまうのです。

この前後の様子はどうだったのか。さらに、

今までと比べ、非常に内容が異様で、携帯の画面いっぱいに「死にたい」と写ることも珍しくありません。

「異様」の具体的な内容はこの例のほかにどういうものがあったのか。
これらの情報が必要です。
そして何より重要なのは、直接よくお話を聞いて、これらの変化の背景にある何らかのものを把握することです。
けれども、あなたがそれをしようとすることはお勧めできません。

2.自分にできることは何かあるのでしょうか。

むしろ何かしようと思わないほうがいいと思います。この方のためになる唯一のことは、精神科の受診でしょう。ですから、あなたに出来ることがあるとすれば、受診を勧めることでしょう。あるいは、この方の親御さんが学校での様子を知らないとすれば、それを教えて差し上げることでしょう。

一時でも彼女に頼りにされたからには、元気になるまで責任を持ちたいのです。

そういうふうに考えてはいけません。精神症状を甘く見てはいけません。あなたの手に負えるものではないと理解すべきです。友達の力になりたいという気持ちはよくわかりますが、精神障害の場合には、何とか力になろうとすることがかえって治療を遅らせ、悪い結果になることは少なからずあるものです。自分に出来ることには限界がある(そして、その限界は意外にすぐそこにある)ことを知る必要があります。ぎりぎりまで力になろうとして努力し、無理となった時点で放り出すような形になるのは最悪の帰結となりかねません。

たとえばこの【1582】では、もちろんリストカットだけでは何とも言えないとはいえ、統合失調症も考えられます。(統合失調症でもリストカットが目立つケースがあるのは【1417】【1501】の例の通りです。) そして統合失調症だった場合、友達として何とか力になろうとするよりも、必要なことは精神科で治療を開始することです。


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