精神科Q&A

【1477】パワハラが原因でうつになった主人が、その後の経過を見ると躁うつ病のように見えます


Q:  主人44歳、私39歳、長男6歳、次男3歳の四人家族です。海外赴任5年目の昨年5月に、職場の上司によるパワーハラスメントが原因で、主人が突然うつ状態が1週間ほど続き、発狂、自殺企図、過換気発作で倒れ入院。数日後、帰国し、都内の病院に搬送され、2ヶ月ほど入院しました。当初、診断はうつ病で、デプロメール等6種類ほど飲んでいました。8月下旬に一度復職しましたが、2週間後うつを再発し、その2週間後に再び休職。デプロメールからパキシルに変えて、再び今年の2月中旬に復職。現在は、営業職から非営業職に変えて、通常勤務を続けております。

この1年間で、うつとうつの回復した状態が交互に繰り返されていますが、うつの回復期に奇行が目立ち、振り回され大変疲れております。そこで、私の質問は、夫はもしや躁うつ病ではないか?ということです。

もともと結婚する前から仕事中毒なところがあり、結婚して子供が生まれてからも仕事に対する熱意は変わりませんでした。几帳面で真面目、完璧主義で神経質で不安症ですが、一方で周囲の評判は気にせず、熱しやすいが冷めやすいという一面もありました。新居を購入したころ自ら海外赴任を希望し、二人目の臨月直前に海外赴任の内定を受け、飛ぶように赴任して行きました。半年後に私ども家族が引っ越しましたが、同居を始めたときから帰宅は午前様が当たり前。土日も出勤が続いたり、家にいてもソファーに寝転がっている状態でした。仕事も多忙、上司も厳しくトラブルも多く、ストレスや不安解消のためでしょうか? 赴任する以前のストレス解消は買い物でしたが、単身赴任中の半年間で現地の女性との戯れを覚え、あるいはパソコン上での女性の写真や動画などを深夜部屋にこもって見ていたりするようなことが多々あったようです。

抗うつ剤を飲み始めてからの状態は、デプロメールでは1ヶ月ほど(昨年6月頃から)で気分が上がり、入院先から高額な音楽プレーヤーや音楽を数百曲ねだり、自己中心的な難題を主張し、執着が強く細かい指示などで振り回されました。退院後も高額な携帯電話、大型テレビ、DVDレコーダーなどをねだり、うつ発症についての話題になると攻撃的になり、しまいには「お前は病気だ。病院へ行って診てもらったほうがいい」と言われました。またリハビリで始めた家事なども、やらされていると、私を批判しました。こういうときは本人はかなり好調なようですが、私から見ていると、視野が狭くなりイライラすることが多く、話し合いが出来る状態では無かったです。

結局、8月下旬の復職後1週間くらいまで活動的に自分からメールを出したり、人と会ったりしましたが、その後すぐに再発し、9月中旬に再度休職し11月中旬くらいまでうつ状態が続きました。

顕著なのは、2回目の復職が決まった今年2月上旬以降です。頻繁にメールや電話で連絡を取り合い、昼食や夕食を友人ととったり、ゴルフのコンペに参加すると言い出したりするまでに回復しました。が、一方で、クレジットカードや銀行カードを新しく10枚ほど発行したり、株式の売買取引を始めました。屋外で外国人と大声で外国語で電話したり、海外の特定の場所でしか使用できない飲食店のカードやかつて出入りしていた海外の高級クラブの会員券を自分の部屋に持ち込んだりしました。注意すると「今は家族が一番なんだ。考えていることとやっていることが一致していない。大丈夫か?」と自問自答しながらクラブの会員券に鋏を入れました。一方、さほど高額ではないものの紳士用の鞄、高品質な音楽プレーヤーや古文書のレプリカなどを通販でポンポンと購入したので、注意すると「株で儲けたお金で買ったんだから文句ないだろう。今の俺は自分を完全にコントロール出来ている」と自信満々で応え、逆に家事がやや遅れ気味な私の行動を監視し始めました。共通の知人には「妻がお小遣いをくれないので大変苦労している」「子供と離れたくない」という内容の非常に長いメールを送ったりして、困惑させたりしています。また、最悪なことは、子供の下半身だけの写真を携帯やデジカメで撮ってパソコンに落としていたことですが、本人は全くこの感覚に疑いを持っていないようで、注意すら出来ません。(3月末に写真を発見してから、私の緊張が増し、主人に対する態度が冷ややかになりました。病気に良くないとは知りつつ、全く信頼出来なくなってしまったのです。)

4月上旬までのおよそ2ヶ月間この状態が続いた後、気分が安定している時期が1週間続いたと思ったら、今度は帰宅後夕飯を食べた後、部屋から出てこなくなり音楽を大音量でかけるようになりました。夕食後、パキシルを飲むと眠くなるとかで、電気をこうこうと付け放しいびきをかいて深夜まで眠り、深夜に風呂に入りサイレースを飲んで音楽をかけて眠るらしく、午前3,4時に大音量の音楽がかかりっ放しということがあって注意しました。音楽を止め、今度は深夜に起きた後、読書を始めましたが、眠ってしまった間に付け放した電気スタンドが羽毛布団の上に倒れて布団カバーと布団本体を焦がすボヤを出しました。(現在は、パキシル40mgとサイレース、酸化マグネシウム0.5gだけです。時々体が痺れるといった副作用を感じると言っています。)

2回目の復職(今年2月中旬)から、通勤と通院が困難なことから、主治医を会社の産業医だけに絞りました。会社の産業医には、当初から復職のコーディネートやセカンドオピニオンとして薬の効用の確認などをお願いしていただけで、病気に関して相談しずらく、2回目の復職以降の家庭内のトラブルについては一切相談していません。以前、入院先のケースワーカーに「うつ病は気分の上がり下がりを繰り返しながら徐々に回復していくもの」と助言を頂いたことがあり、回復過程が具体的によく分からないので「こんなものかな」と様子見していました。

一度、大学病院などで見て頂いた方が良いのでしょうか?ご助言、宜しくお願い致します。


林: 最近のこの方の症状からは、確かに躁うつ病の可能性があると思います。躁うつ病の躁状態か、あるいは、躁うつ混合状態かもしれません。抗うつ薬のパキシルが悪影響を及ぼしている可能性も否定できません。
但し、元々はどういう性格の方だったのかを本当は知りたいところです。元々このような傾向があった人であるとすると、診断はかなり難しくなります。(躁うつ病ではなく、性格の問題ということも考えられることになります)。
もし元々はこういう言動を取る方ではなかったとすれば、躁うつ病の疑いが濃厚です。だとすると、今の処方(抗うつ薬と睡眠薬のみ)では、悪化する一方でしょう。

会社の産業医には、当初から復職のコーディネートやセカンドオピニオンとして薬の効用の確認などをお願いしていただけで、病気に関して相談しずらく、2回目の復職以降の家庭内のトラブルについては一切相談していません。

それでは正確な診断はできず、したがって適切な治療はできません。「病気に関して相談しずらい」のだとすれば、そもそも治療になりません。今の医師にすべてをお伝えするか、それが無理なのであれば、主治医をかえるべきです。


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