精神科Q&A

【1476】社員が通院について嘘をついているなどのことから、擬態うつ病ではないかと疑っています


Q:  会社で人事担当をしている30代の女性です。先日、先生の「擬態うつ病」を購入し、読ませていただきました。その中でうつ病というものを誤解していたことに気づきました。やはり、いろいろな情報が入りすぎて真実が見えなくなっていたのだと思います。 医師の診断書があてにならないという点で、とても驚きました。私は先日、心因反応という診断書を持参した既婚者の男性社員の診断書を書いた医師に昨日連絡をしたのですが、その結果で分かったこともありましたが、一方で連絡をしなければよかったとも思っています。 先生の本を読んで、その男性社員について考えてみました。擬態うつ病に書かれている、本物のうつ病とを鑑別する症状の特徴については、次の通りです。(彼の症状については、私はそれほど本人と親しいわけではないので他の人事担当や所属長にも聞いてみました)。

(1) うつの気分の強さ
これについては良く分かりませんでした。それほど何かをする気力がない、何もせずボーっとしていることがあるなど特に目立ったこともなく、本人が「具合がよくない」「疲れた」等発言することはあっても、目に見えてうつの気分がひどいという様子は見たことがないということです。手の震えが止まらなくなっているのを所属長が見ていますが、それは本人が所属長に「手が震えて止まらない」と申告してきたのを見たということです。
(2) 状況による変化
これにはとても気になる点があります。「良いことがあると気分が晴れる」「嫌なことがあったから滅入る」といったことを本人が何度か言っている。所属長によると、良いことがあったときはとても機嫌もよいし、仕事もよくしているが、ちょっとでも嫌なことがあった場合は仕事もせずにインターネット等を見て過ごしていることがあるという話です。 
(3) きっかけ
これは良く分かりません。いつからそのような状態になったのか分からないからです。本人は以前から繰り返していると言っています。 
(4) 持続期間
これもはっきりしません。周期というものは決まっていないように思います。その時々で違うのです。何日か休みや早退が続き、所属長がそのような診断を知らなかったときに本人を呼んで怒ったことがあったそうですが、そのとき本人は「甘えていました」といって次の日からは変わった様子もなく働いていたということです。それがまた、休みや早退が続いたので、所属長が話しをしようとしていた矢先人事へ診断書を提出してきたということです。

 本日もその男性社員は休んでいます。そこで所属長が、「病院には行っているのか?」と質問したところ「病院には行っている。○○病院です」といったのです。○○病院というのは昨日私が対応を相談しようとした先生がいらっしゃる病院です。先生は、彼は一日(診断書を書いてもらった日)しか来ていないと話していましたので、本人に「月にどのくらいいっているの?」と所属長が聞いてみると「毎週月曜日に主治医の先生がいるので、毎週行っている」との返事でした。この時点で既に疑問が生じます。第一に、本人は○○病院には毎週行っているのに病院の方はきていないと言っている。第二に、先日の電話で先生は主治医はいるが非常勤なのでいつもいるわけではないと言っていた。となると毎週月曜日にいることはないと思われます。また、主治医の先生が診たのは去年のある月(その月のみなのかその月が最後なのか、それ以前に何度通院したかなどは分かりません)とのことそれ以降は通院していないのです。 所属長にも他の人事担当にも昨日の○○病院の先生に聞いたことを話してあったので所属長は「主治医の先生はなんていう名前なの?」と聞いたのですが、「覚えていない、最近主治医が変わった、以前の先生の名前も思い出せない」ということだったようです。
 これは、私が所属長から聞いたことであり、本人から直接聞いたことではないので判断はできませんが、どうも気になる点があるのです。先生の本を読んだからこのように診断するべきだと思ってしまっているのかもしれませんが、私には擬態うつ病のように思えるのです。 仮に擬態うつ病だとした場合、本人のいいなりになっていはいけないと思うのです。 どちらなのかはっきりさせて対応を考えたいと思っています。 また、長文になり申し訳ございません。よろしくお願い致します。 


林: これはよくわかりません。どちらかといえば擬態うつ病に見えます。逆に、うつ病に見える点はあまりありません。しかし、情報不足でよくわかりません。通院についての嘘も、どちらかといえば擬態うつ病であることを示唆する印象はありますが、どんな病気の場合でも、職場に対して、通院状況や治療内容について嘘をつく人はよくいますので(それが非難に値するかどうかは難しいところです。病状について、職場に報告する義務はないと言えばその通りですので)、やはりこれも決め手にはなりません。

仮に擬態うつ病だとした場合、本人のいいなりになっていはいけないと思うのです。 どちらなのかはっきりさせて対応を考えたいと思っています。

そのお気持ちはよくわかりますが、擬態うつ病かうつ病か、はっきりしないこともしばしばあるものです。そのような場合どうすべきか、一概には言えませんが、職場としては職場のルールにそった対応をするというのが現実的な結論になるかと思います。


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