精神科Q&A

【0114】 テレビでテロ事件を見てPTSDに?


Q: 31歳男性です。テレビでニューヨークのテロ事件(2001.9.11.)の映像を見てから、精神不安定になってしまいました。同じようなテロにあうのではないかとか、地球が滅亡するくらいの大戦争になるのではないかとどうしても考えてしまい、とても不安でふるえが出てきます。私は昔ニューヨークに住んでいたので、アメリカに対して愛国心のようなものも持っています。あのビルもよく知っています。そうしたことも関係しているのでしょうか。また、林先生のPTSDのページを見ると、人が死ぬような場面を見たという経験でもPTSDになると書いてありますが、それはテレビで見た場合でもありうるのでしょうか。  

: 怖い体験をした時は、それが実際の体験でも、あるいは映像などで見ただけでも、また時によっては架空の映像などを見ただけでも、そのあと不安感などに襲われることは誰にでもありうることです。それをPTSDというかどうかは、ある意味では難しく、ある意味では恣意的とも言えます。はっきりと決めることは誰にもできませんので、さしあたっての専門家の合意として作られたのが今の診断基準です。ですから、ごく単純に、診断基準にあてはまればPTSD、あてはまらなければPTSDではない、ということになります。ただしあてはまらなくても、PTSDと同じような心理メカニズムがあることは当然考えられます。今のところはそれはPTSDとは呼ばないと仮に決まっているということにすぎません。

最近の風潮としては、あまり厳密に基準にあわなくてもPTSDと呼ぶ人が多いようです。現に症状がある場合に、診断名がないとかえって落ち着かないという気持ちはわかります。けれども、PTSDのような場合は、広く解釈すると、ショックな出来事があって起きた症状はみんなPTSDということになりかねません。私はそれは間違っていると思います。PTSDというのはまだ発展途上の病名であるということを理解して、基準に合わせた診断をするべきだと思います。今のところはということですが。

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