精神科Q&A

【0590】生活費に対する心配が非常に強いうつ状態の母に、お金を渡せば症状はよくなるでしょうか


Q: 55歳の母親は、臨床心理士からうつ状態と診断されました。
最近、林先生のホームページを見せていただき、これまでの私の母に対する態度は不適切だったと反省しています。母に不安を訴えられても、「私には、どうしてやることも出来ない」としか言えなかったのです。
そう言ったことについて、母は私を責めました。しかし、母の不安を私が取り除くことなど出来ないのです。
いくら不安を聞いても、同じ話しばかりです。
ご相談したいのは、「(私が母に)お金を渡すことが、母がうつ状態から抜け出すために必要かどうか」です。

父親は昨年から、年金を受給しております。
母は生活費に対する不安が非常に強く、私に「何とかしてほしい」と哀願します。
私はこれまでにも、100万円程度を母に渡したことがあります。これまでお金を渡していた時は、はっきりとした理由があったのです。例えば、妹の学費が足りないから20万円とか、税金が払いきれないから10万円、といった理由です。

現在の母はうつ状態ですので、これまでのように「必要なお金の使途を明確にして、私に伝えられない」ようにも見え、湧き上がってくる不安から「何とかしてほしい」と繰り返すだけのようにも見えます。「生活費を何とかしてほしい」と言う話しではじまったのが、(漠然としてしまいますが)「弟の将来」「妹の将来」のことまで波及するのです。

私には自分自身の生活もあり、母が要求するような額は、私のすべての貯金を崩しても足りません。

私は社会人ですが、将来の昇給の為には大卒の資格が必要なので、夜学に通うために、学費を貯蓄中です。貯金を渡してしまえば、私は大学に通うことが出来ません。
しかし、お金で母の不安が何とかなるなら、要求する額を渡してあげたいようにも思います。とっぴな考えかもしれませんが、お金を渡せば、うつ状態は回復するのでしょうか?


: お金を渡しても、お母様の病状は回復しないと思います。
お母様の、お金に対する心配が、うつ病の病的な不安に基づくものであれば、いくらお金を渡しても、また次の不安が出てきて、さらにお金が必要とおっしゃるでしょう。

もっとも、その前に、お母様がうつ病かどうかをはっきりさせる必要があります。メールの内容からはうつ病のようですが、きちんと診断を受けることがまず必要です。

臨床心理士からうつ状態と診断されました。

というだけでは、まだ何ともいえないでしょう。(うつ病とうつ状態・抑うつ状態の違いについては、うつ病の相談室213ページからをよくお読みください)

最近、林先生のホームページを見せていただき、これまでの私の母に対する態度は不適切だったと反省しています。

とお書きになっていますが、それはうつ病に関する部分をお読みになったのではないでしょうか。うつ病の人への対応は、うつ状態には、必ずしもあてはまりません。不適切なこともあります。うつ状態という用語は、さまざまな物を含んでいるからです。その中にはうつ病もありますが、擬態うつ病ということもあります。

うつ病であれば、病院で治療を受けることが大切です。
お金を渡す・渡さないを考える前に、病院できちんと診断を受けてください。


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