精神科Q&A

【0491】ビールではアルコール依存症にはならないというのは本当でしょうか


Q: 夫(39歳)は、対人恐怖症(会議、レストラン、お店の売り場などの状況で発汗、ふるえなどが起きる)で精神科にかかっており、10年ほどデパス(0.5mg)を処方されています。
 夫はビール、たばこ、コーヒーをたしなみます。ただし、お酒には弱く、ビール以外は飲みません。デパスは朝、昼の定時に1錠づつのほか、会議の前などには余分に飲むようですが、事前の不安感が強いときはもう少し、もう少しと結局4、5錠飲んでしまう事もある様です。
 お聞きしたいのは、夫の飲酒のついてです。以前からビールが好きだったのですが、4−5年前から、仕事に行っていない時間、つまり、平日の夜と休日(毎週土日曜)の終日、自宅でビールを飲み続けています。以前、精神科の医者に「夫はアルコール依存症なのではないか」と聞いた事があるのですが、「ビールではアルコール依存症にはならない」と言われました。本人は「仕事に行っている間は飲んでない(我慢できる)のだから、自分はアル中ではない」と言っています。でも、平日の夜はまだしも、休日は起きてコーヒーを1杯程飲んだ後はもうビールになってしまいます。早ければ10時前には飲みはじめています。酒量は平日夜は1リットル前後、休日は2−3リットルです。私にはどうにも普通の飲み方とは思えないのですが、このまま放っておいてもよいものでしょうか。


: ビールでもアルコール依存症になります。あなたのご主人はアルコール依存症だと思います。アルコールをやめる以外の治療法ありません。
 アルコール依存症は否認の病です。本人も、そして周囲の人も、いろいろな理由をあげて、アルコール依存症ではない、と主張するのが特徴です。
「ビールを飲んでいるうちはアルコール依存症にならない」
というのも、代表的な否認の言葉です。ビールであれ何であれ、アルコールという薬物を含んでいる飲み物はすべて、アルコール依存症の原因になります。
 アルコール依存症という病気は、アルコールという薬物そのものを体に取り込むことを欲しますので、アルコール濃度が低いビールはその目的には非効率であるため、ビールからウィスキーや日本酒に好みがうつっていく傾向はあります。けれどもビールだけでアルコール依存症になる人もいます。
 以前私はなにかの雑誌で、アルコールの専門家が質問に答える記事を読んだことがあります。そのなかで質問者が
「ビールだけではアルコール依存症にはならないのですか」
と何回もきいていました。これも、アルコール依存症を否定する要素をなにか聞き出したいという意図が見えており、やはり否認の一種といえるでしょう。
それからあなたのご主人の言葉、
「仕事に行っている間は飲んでない(我慢できる)のだから、自分はアル中ではない」
も、代表的な否認で、アルコール依存症の人の決まり文句といってもいいくらいです。
 あなたのご主人はアルコール依存症です。アルコールをやめる以外の治療法はありません。
 


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