(2010.9.5./2013.4.5.記)
#1
精神病
笠原 嘉 著 岩波新書 1998年
統合失調症についての古典的な、しかし内容は時代を超えて普遍的に通用する名著です。本のタイトルは「精神病」ですが、内容は統合失調症の本です。1998年に書かれた本ですが、不朽の名著と呼ぶにふさわしい充実した記述にあふれています。著者の笠原嘉先生は1928年生まれ、名古屋大学精神科の元教授でいらっしゃいます。最大級に豊富な臨床のご経験に加えて、当然ながら科学的なデータも十二分に検討され、それらを自然に融合させた正確無比の内容を、独特の穏やかな語り口で綴っておられます。しかも患者・家族の皆様への愛情が、どの頁のどの文にもにじんでいるのが感じられます。いくら称えても称え足りない本ですが、一方、いくら称えてもこの本の真価をお伝えすることはできそうにありません。「統合失調症の本を一冊だけ読むなら」と冒頭に言いましたが、「読むなら」ではなく、ぜひ必ずお読みください。他の本や、それからネットの情報などを見ている時間がもしおありなら、この一冊を何回も読んだほうがはるかに有益だと思います。最後に章立てだけご紹介しておきます。
T章 心の不調
U章 分裂病の特徴
V章 分裂病の発病まで
W章 分裂病の経過
X章 今日の治療
Y章 社会福祉の面から
Z章 分裂病と犯罪をめぐって
[章 分裂病の原因について
\章 分裂病からの贈り物
]章 家族へのアドバイス