精神科Q&A
【2321】無自覚のうつ病というのはあるのでしょうか
Q: 当方、20代前半の男性です。近所に心療内科のクリニックがあり、ある時ふとした気まぐれで受療してみました。 先生の方には大変迷惑なお話ではあるかもしれせんが、先生には大変親切に対応して頂きました。その際にですが、悩みがあるとの名目で色々と最近の悩み(主に業務上の小さなミスや上役に怒られた話など比較的些細な内容)話を聞いて頂いたのですが、結果、うつ病傾向があると言われ、今後の通院を薦められました。 実際の所、1年前に私は転職しており転職前は仕事が上手くいかず、今思えば、鬱に近い状態(朝が苦しい、やる気が起きない、死ぬことを考える胃が痛む、不眠、頭痛などの体調不調、過剰な体重増加)があったと思います。 しかし、当時、擬態うつ病というものがあるのを知っており、私自身に甘えがあったことも自覚していたので、自身の甘えと断じて放置していました。 結果耐えれなくなり、転職することになったのですが、現在の職場では多少の失敗や不安を感じるなどはありますが、比較的順調に行っており、上記の症状も私個人の認識ではすっかり改善したつもりでした。 以上の話は先生には軽く(仕事が上手くいかず転職した、程度)しか話していません。私自身非常に驚いており、これが正しいのか疑問に思っています。無自覚のうつ病というものはありえるのでしょうか。また、私は通院をするべきなのでしょうか?
林:
無自覚のうつ病というものはありえるのでしょうか。
というのがご質問の趣旨と思われますが、その背景として記されているこれまでの経過は、やや納得し難いものがあります。その第一は、
ある時ふとした気まぐれで受療してみました。
という記述で、本当の意味で気まぐれの受診であれば、そのようなことをすること自体に病的なものが感じられます。実際には「気まぐれ」というのはこの質問者独特の表現か、または婉曲表現のようなもので、ここには書かれていない何らかの理由があったものと推定できます。
そして、ここに書かれている内容だけをみても、過去において鬱と解される症状があったのは確かですので、「無自覚」という表現はあたりません。
しかし、当時、擬態うつ病というものがあるのを知っており、私自身に甘えがあったことも自覚していたので、自身の甘えと断じて放置していました。
とのことですが、甘えであったかどうかはわかりません。うつ病であった可能性もあります。
このケースを離れれば、無自覚であるのに質問票などの結果からうつ病であるとかうつ病の疑いであると指摘されることは最近ではよくあることで、それはサイコバブル社会にお書きしたアブノーマライゼーションのひとつの現われということができます。
しかしそれはこの【2321】のケースにはあてはまるとは言えません。
また、私は通院をするべきなのでしょうか?
わかりません。今回の受診に至ったご自身の心の動きをよく振り返り、また今みていただいている医師の話をよくお聞きになったうえで、お決めください。
(2012.11.5.)