精神科Q&A
【2314】アルツハイマー病の母が、変な臭いのあとフラフラするようになった
Q: 74歳で軽度のアルツハイマーと診断を受けた母が、アリセプトを処方され、約1年になります。飲みだして2,3カ月たったころより、ときどき「フッと石油系の変な臭いがして、そのあと急に気分が悪くなり頭がフラフラする」と言い出しました。その症状を見た家族は、「顔色が悪くしんどそうで、目を閉じてかなり左右に頭が揺れていた」と言います。症状は、2分程度で治まるようですが、「臭いがすると、必ず気分が悪くなる」ようです。主治医にその件を告げ、「アリセプトの副作用ではないか」と聞くと、薬の副作用の本を見せられ、「ここに記載がないので副作用ではない。臭いの事は耳鼻科で診てもらわないとわからない。」と言われ、結局耳鼻科を受診しました。CTでも何の問題もないそうで、考えられるとすれば「てんかん」だといわれましたが、「脳神経内科の先生にかかられているのだから、心配ないでしょう」ともいわれました。なんとなくしっくりしないまま病院を後にして、ネットで検索していたところ、先生のサイトにたどりつきました。先生のお考えをお聞かせいただき、セカンドオピニオンを検討しようかと思っております。よろしくお願い致します。
林:
「フッと石油系の変な臭いがして、そのあと急に気分が悪くなり頭がフラフラする」
これはてんかんの症状とみるのが妥当です。てんかん発作のうち、「辺縁系発作」と呼ばれるタイプでは、まず嗅覚の症状が現れ、その直後に意識の変容が起こるというのが典型的なパターンです。(「辺縁系」とは脳内の部位を表す言葉です)
アルツハイマー病の一症状としててんかん発作が起こるのは稀なことではありませんので、お母様のこの症状は、アルツハイマー病によるものとして特に矛盾はありません。
メールの記載からすると、今かかっておられるのは脳神経外科の先生なのでしょうか。そしてアリセプトを処方しておられるということは、アルツハイマー病について一定の知識と診療経験をお持ちと推測できますが、この症状をみて
臭いの事は耳鼻科で診てもらわないとわからない
という説明がなされたとすると、アルツハイマー病についての診療技術に疑問を持たざるを得ません。ですから、そもそもアルツハイマー病という診断自体が本当に正しいのかという点も確認したほうがいいかもしれません。
(2012.10.5.)