精神科Q&A
【2275】高次脳機能障害の兄について、希望がわいてきました
Q: 30代女性です。いつも貴サイトを興味深く拝見させていただいております。「名作マンガで精神医学」もさっそく読ませていただきました。統合失調症から高次脳機能障害まで、あっという間に読み終えてしまいました。特に感銘を受けたのは高次脳機能障害です。わたしの兄の話で申し訳ありませんが、20年前に交通事故で生死を彷徨い、1か月間意識不明の状態でした。お医者さまのご尽力により一命をとりとめましたが、難聴・耳鳴り・人格の変化などにより、職場を転々とし、現在は家業をなんとか継いでいるぐあいです。年々、耳鳴りはひどくなり、穏やかで温厚であった人柄は殺伐として、集中力の低下も見受けられます。年齢は40歳手前で仕事盛りかと思うのですが、うまくできない歯がゆさを本人もわかっているようで、より一層いらいらしているようです。メディアなどで、事故や病気の後遺症として「高次脳機能障害」を知り、家族と問題を起すたびに兄に受診をさせようかと家族と相談するのですが、兄自身はいまさらどうしようもないと半ばなげやりです。しかし今回「名作マンガで精神医学」で高次脳機能障害と闘われた?(共存し克服された)方のマンガを知り、今一度家族で話合い、兄をもとの穏やかな兄に戻せるなら!と希望がわいてきました。まだ当該のマンガは未読ですが、これからいろいろな方の経験をもとに明るい家族にしていきたいと前向きに考えることができました。貴重なきっかけをいただきほんとうに感謝しております。
林: 私の著書をお読みいただきありがとうございました。高次脳機能障害の章で取り上げている中心作品の、
高次脳機能障害と闘われた?(共存し克服された)方のマンガ
である『日々コウジ中』は、ご指摘のとおり、希望にあふれる作品です。是非お読みください。
といっても、『日々コウジ中』の作者である、高次脳機能障害者を夫に持った妻は、大変なご苦労を重ね、ようやく希望にたどりついたという経緯で、実際のご苦労は作品に書かれている以上のものがあったと推察されます。
また、脳の外傷による高次脳機能障害は、その損傷部位や広がりにより、回復の度合いは大きく異なります。お兄様につきましては、まず精密検査を受けて、現実的なゴールを定め、ご家族が一体となってそのゴールを目指されることを願っております。
(2012.7.5.)