精神科Q&A
【2204】脳梗塞の痕がある76 歳母の幻聴
Q: 76歳になる母は、6〜7年前に「隣人に殺される」「光線を当てて殺しにかかっている相談をしている」などの幻聴を発症し、精神科にお世話になりました。結果、脳梗塞の痕が見つかり、それが原因であるとわかって薬物治療を行い、症状は全く無くなったのです。 しかし数日前、深夜に一人暮らしの母から電話がかかり、「殺されるかもわからないから今から来て欲しい」と電話があり、あわてて近くに住む実家に向かいました。話を聞くと、全く以前の発症と同じような事を言い出し始め、取りあえず住まいに連れてきて現在寝泊まりしています。 脳外科に連れて行きCTで脳腫瘍などは無いとの診断で、MRIを予約しておりますが、就寝前と途中目が覚めた場合、朝起きる直前などに幻聴が聞こえており、母も事実だと言って聞きません。 そのような事はできないと言っても、信じられないかも分からないけど事実だと言い張ります。このような状況で、母の幻聴を取り除いてあげる事はお薬などでできる物なのでしょうか? 苦しみ疲弊する母をみているとこちらも辛く、なんとか楽にしてあげたいと思うのですが。
林: ご高齢になってからのこうした幻聴・被害妄想は、統合失調症がこの年齢になって発症したという可能性も否定はできませんが、何らかの脳器質性の疾患(認知症など)の可能性が強いとみるのが普通です。しかし診断がいずれであっても、治療としては抗精神病薬を用いるのが普通で、効果は十分に期待できます。
この【2204】のケースでは、6,7年前が初発で、このとき、
脳梗塞の痕が見つかり、それが原因であるとわかって
とのことですが、確かに脳梗塞の痕は症状との関連が疑われますが、「原因」といえるほど確実とはいえません。いずれにせよこのとき
薬物治療を行い、症状は全く無くなったのです。
とのこと、おそらく抗精神病薬が投与されたと推定できます。
現在は、
母も事実だと言って聞きません。 そのような事はできないと言っても、信じられないかも分からないけど事実だと言い張ります。
とのこと、妄想を持っている人に、それは事実でないと説得しても効果がないのは当然で、むしろご本人にとっては自分の言うことをわかってもらえないと感じて頑なになるばかりで逆効果です。
このような状況で、母の幻聴を取り除いてあげる事はお薬などでできる物なのでしょうか?
抗精神病薬の効果が期待できます。精神科Q&Aにもこのような実例は多数あります。
(2012.3.5.)