精神科Q&A
【2185】他人の気、特に悪い気が見えてしまうという会社の同僚について
Q: 私は50代女性です。
会社の同僚の30代の女性のことなのですが、最初はある別の同僚と同じ部屋で仕事をするのがつらいとの訴えがありました。その理由を自分は霊感が強くて人の気、特に悪い気が見えてしまうので同じ空間にはいられない、というものでした。 その別の同僚という人は気遣いができるタイプではないのでそのあたりが実際の理由だと思い、仕事を進めるためにとりあえず彼女だけ別の場所で仕事をしてもらっていました。 私自身は霊感を信じませんが、今までにそういうことを言う人を何人も知っていましたので、あまり深く考えず物理的に離しておけば大丈夫だろうと思っておりました。霊感については、自分は具体的にはわからないけれど、そういう人もいるんだねというスタンスでいました。
しかし、そういう対応をとっていたにも関わらず彼女は体調をしょっちゅう崩すようになりました。仕事中に座っていることさえできなくなってしまうのです。最初は周囲の人の気だけのようだったのが、すれ違うだけの人の悪い気も何もかも全部自分に入ってきてしまうようになってきているそうです。 その時点で私も思いつくところがあり、「耳はすべての音を聞いているけれど、脳が選択的に処理してある意味聞きたい音だけを聞いているそうなんだけど、音についてはどう?」とたずねますと、そう言われれば音についても全部入って来るようで、遠くに居る人の声がはっきり聞こえることがあるそうです。 統合失調症の症状として妄想や幻覚、幻聴があるということは知識として知っておりましたが、霊感が強いという彼女に統合失調症の可能性があることにその時気づき、しかも彼女は症状が悪化しているようなのです。 霊的なことなのでお祓いやお清めをしているとの話です。 お医者さんにかかっていないのかたずねると、心療内科にかかっていて弱い薬を処方されているようですが、あまり飲んではいないようです。 お祓いのことは否定せず、漢方や食べ物や運動などいろいろなアプローチがあっていいと思うけど、そのお医者さんにまず相談すべきではないかなと話し、薬もちゃんと飲むと劇的によくなることもあるらしいよ、とか病院行きばかり強調して反発されるといけないので、選択肢を示すような話をしました。そのときはもう絶対に精神科に行かないといけないと思っていました。頭の中はパニックでした。 家に帰り、霊感と統合失調症の関連を調べていて林先生のHPに行き当たりました。先生が推薦されている本も注文しました。 彼女は統合失調症の可能性があると思われますか? 私としてはその時点で最善を尽くしたつもりですが、彼女に「霊感なんてものはなくそれは病気なんだ。」と言ってしまいそうで心配です。 私が産業医(内科)に誰とは言わずに相談しても大丈夫なものかどうか考えています。
林:
彼女は統合失調症の可能性があると思われますか?
その可能性が最も高いです。
私としてはその時点で最善を尽くしたつもりです
その通り、これまでの質問者の対応は、適切だったと思います。
彼女に「霊感なんてものはなくそれは病気なんだ。」と言ってしまいそうで心配です。
それを言うことはもちろんプラスにはなりません。
私が産業医(内科)に誰とは言わずに相談しても大丈夫なものかどうか考えています。
相談することに問題はないと思います。しかし、専門以外の科についての医師の知識はまちまちですので、その産業医(内科)の先生が、統合失調症につきどれだけ知識をお持ちかはわかりません。あまり精神科に興味のない先生ですと、あまり取り合ってもらえないでしょう。
結局のところ、統合失調症の人に対し、職場の同僚という立場でできることは限られており、質問者のこれまでの対応はほぼ最善だったと思います。しかしにもかかわらず症状はよくなっていませんので、これから質問者にできることがあるとすれば、この方のご家族に連絡し、ご家族から受診を促していただくということになると思います。
(2012.1.5.)