精神科Q&A
【2178】薬でなくなる現象は統合失調症の症状ですか
Q: 20代女性です。私は15歳で不登校になり心療内科を受診し、そこでもらった薬をまとめて飲んで自殺未遂をしたため、同15歳から精神科を受診し始めました。以来、ずっと同じ主治医にかかっており、18歳からセロクエル 25 mgを飲み始めました。自分の覚えている中で強く印象に残っていることは、以下の通りです。・部屋に誰かが入ってきそうでとても怖く、逃げる方法をひたすら考えた。・ベッドの上で体育座りをしており、母から体育座りのまま引き摺り下ろされたが、自分の考えが頭の中で響くだけで何も反応できなかった。・会話を理解するのが難しく、yesかnoでしか答えられなくなっていた。・背後に気配を感じていることが多々あった。・日常の行動(学校に行く準備など)ができない、あるいはできても時間がかかるようになった。・友達から嫌われているのではないかと思っていた。
薬を飲み始めて半年程経ったあたりから、徐々に良くなっていき、19歳の時に主治医の指導の下、薬を飲むのをやめました。しかし、精神的なストレスや睡眠不足、生理前の不調などをきっかけにして、不調がで始めるため、その時は受診し、しばらく薬を飲むようにしていました。背後に人の気配を感じ始めた場合はすぐにおかしいと思えましたが、やる気がなくなって生活の質が下がったり、嫌われているのではといった疑心暗鬼な状態は自分の心の問題と思い、1、2週間ほど様子をみて、大学生活に支障をきたし始めたらたら受診しました。
22歳の時、家族の問題で大きなストレスを感じると共にやる気がなくなってしまい、食べる・寝る・最低限の買出しなどで精一杯な状態が3ヶ月ほど続きました。ストレスがかかる度に時間を失ってしまうのが嫌で、主治医と相談し、予防としてセロクエル 12.5 mgを毎日飲み続けることになりました。ところが最近、忙しさにかまけて、2ヶ月程薬を切らしてしまいました。すると、知人が私に対して文句を言ってくるのを想像して(というよりは、自分が考えたことを頭の中で話す時のような感じで、文句が勝手に混ざってきます)、その文句に対して頭の中で反論する状態が続き、とても疲れてしまいました。1日の大半を反論に費やしてしまって、生活しづらくなりました。今、同じ薬を25 mg飲み始めて3週間程経ちましたが、そのようなことはなくなりました。薬がなくなってから生じ、薬を飲み始めて消えるということは、これも症状の1つと捉えてよいのでしょうか。
最後にもう1つ、気になっていることがあります。小学生の時(いつ頃か覚えていません)、殺人鬼に刺された時に死んだフリをするために、呼吸で布団が揺れないように練習をしました。また、殺人鬼から隠れるために、横に並べられた両親の布団と布団の隙間にしばしば寝ました。そこに寝ると掛け布団に段差ができず、殺人鬼に自分がいることがばれないと思ったからです。入浴時に殺された時に他殺だと気付いてもらうために、タイルにたすけてと書く習慣が一時期ありました。自分のお湯のみに毒がついてると思い、家族の別の人のお湯のみを使うこともありました。これらの行動は、恐怖心を子供なりに理論的に対処しようとした結果だったのでしょうか、それとも病気だったのでしょうか。 主治医から統合失調症であると断言されていませんが、母は、私が統合失調症の陰性症状の可能性があるということを聞いたことがあるそうです。もしかしたら、自分も聞いているけれど覚えていないのかもしれません。自分は怠け癖があって性格にも問題のある統合失調症ではないかと思っていますが、性格の問題だと言われたらどうしようと思い、主治医にはまだ聞けていません。次の受診時はおそらく地理的な要因で転院していると思うので、自分の状態を聞けるのはまだまだ先になりそうです。以前のような恐怖に包まれた状態や、会話ができない状態に二度となりたくないので、家族になんと言われようとも、自分の異常に逸早く気付いて対処したいと思っています。長く拙い文章ですが、お目通しありがとうございました。
林:
薬がなくなってから生じ、薬を飲み始めて消えるということは、これも症状の1つと捉えてよいのでしょうか。
その通り、統合失調症の症状です。薬との関係を考えるまでもなく、
知人が私に対して文句を言ってくるのを想像して(というよりは、自分が考えたことを頭の中で話す時のような感じで、文句が勝手に混ざってきます)、その文句に対して頭の中で反論する状態が続き、とても疲れてしまいました。
これは統合失調症に典型的な自我障害の現れとみることができます。このまま薬の治療を受けずさらに発展すれば、幻聴という体験に変わっていたでしょう。
さかのぼって、
ベッドの上で体育座りをしており、母から体育座りのまま引き摺り下ろされたが、自分の考えが頭の中で響くだけで何も反応できなかった。
このとき質問者は、客観的に見れば昏迷状態であったと思われます。昏迷状態とは、反応がないので意識がないように見えるものの、実は意識障害ではないという症状です。第三者からみると、たとえば一点を凝視して固まってしまっているという状態です。この状態のときの主観的体験をご本人からお聞きできることはあまりないのですが(記憶にはっきり残っていなかったり、残っていても言葉でうまく言い表せなかったりすることが多いものです)、稀にお聞きできることがあり、その場合はこの【2178】の質問者の書かれているような体験が語られるものです。ここでは「自分の考えが頭の中で響く」と表現されていますが、「激しい幻聴が聞こえていた」と表現されることもあります。どちらも本質的には同じものと考えていいでしょう。
忙しさにかまけて、2ヶ月程薬を切らしてしまいました。
今後はこのようなことが絶対にないよう心がけてください。そうすれば安定した経過が期待できます。
(2012.1.5.)