精神科Q&A
【2125】ネットで知り合った友人が多重人格障害だと言い出しました
Q: 私は20代女性です。ネットで知りあった友人A(10代後半の女性)が最近いきなり、「多重人格障害なの」と言い出しました。知り合ってからは半年くらいたつのですが、これまではおかしく感じることはありませんでした。少しネガティブであったり情緒不安定な子だなという印象はありましたが・・・ その話を聞いた直後にツイッターなどで多重人格障害をにおわすような発言を急にしだしたり、自分の人格だというキャラクター設定表のようなものを渡してきたり、会話の途中で「その話題なら○○(別人格)のほうが詳しいよ、かわる?」などと言ってきます。そのカミングアウト直前に彼氏が出来たらしく、またその彼氏も多重人格障害だということでした。彼氏の方は設定が複雑で、主人格は常に眠っているらしく私達と会話している人間自体はその主人格を守るために動いている人格のリーダーだそうです。 その女性は解離性同一性障害という言葉も知りませんし、病院にもいっていないそうで、病院にいくことを勧めていますが「どうせ理解してもらえない」と突っぱねてきます。ほかの人格とはメモでやり取りしているのであらかたのことは理解しているらしいのですが、知らないこともあるといっていました。ネットなどで調べてみると多重人格障害は家族などが気付くことが多いとありましたが、その子の家族は一切気付いていないそうです。最近はツイッターでの多重人格障害などをにおわす発言はなくなりましたし、上記の彼氏とも別れてしまったようですが、三日三晩泣き明かしたという割には主人格を守る存在である設定(?)のほかの人格に変わっているようにも感じられませんでした。 多重人格障害の方は自分の意思でほかの人格と入れ替わったり、メモでやり取りしたりということは有り得るのでしょうか?また、主人格が眠ったままほかの人格が他人と恋をするなどということは有り得るのでしょうか?そのほかの人格に名前があったり、その名前が漫画のキャラクターにしかないような名前であったり、すべての人格が10代後半から20代前半ということは有り得るのでしょうか?その設定自体も、とある人格は離婚している女性で子供がいるなどと込んだものになっているのですが、そういった症状もあるのでしょうか? どう対処していいか分かりません。アドバイスの程よろしくお願いいたします。
林:
多重人格障害の方は自分の意思でほかの人格と入れ替わったり、メモでやり取りしたりということは有り得るのでしょうか?また、主人格が眠ったままほかの人格が他人と恋をするなどということは有り得るのでしょうか?そのほかの人格に名前があったり、その名前が漫画のキャラクターにしかないような名前であったり、すべての人格が10代後半から20代前半ということは有り得るのでしょうか?その設定自体も、とある人格は離婚している女性で子供がいるなどと込んだものになっているのですが、そういった症状もあるのでしょうか?
全部あり得ます。
しかし、全部ウソということもあり得ます。
解離性障害の症状は、多重人格に限らず、演じようと思えば演じられるものがほとんどです。そして、解離性障害の症状は、「本人はそれを意識していない、つまり、わざとではない」というのが最大ともいえる特徴です。
とは言うものの、わざとかわざとではないかは、本人以外には決してわからないことですので(そして解離性障害では、本人でさえも自分がわざとやっているのかわざとでないのかわからない場合もあります)、厳密にいえば解離性障害と詐病は絶対に区別できないということになります。過去のある時代には、「解離性障害などない。あれはすべて詐病」という学説が優勢だったこともあります。
この【2125】の記載からは、当事者であるAさんが「主人格」などの用語を使っていると読めますので(記載が今ひとつはっきりしない部分もあるので、そうでないかもしれませんが・・・たとえば「その女性は解離性同一性障害という言葉も知りませんし、病院にもいっていないそうで、」の「その女性」とは誰を、また、どの人格を指しているのか不明です)、するとAさんは多重人格についての知識をどこかから仕入れていると推定できます。だとすれば詐病の可能性が高い・・・と単純には考えられますが、解離性障害は暗示を受けやすいという特徴もあるので、どこかから知った病気の症状がそのまま本人に見られても、そのことをもって詐病であるという判断に傾くとも言い切れません。
病院にいくことを勧めていますが「どうせ理解してもらえない」と突っぱねてきます。
やはり受診を勧めるのが最善でしょう。これは典型的な解離の症状ですので、精神科医に理解してもらえないなどということはあり得ません。
(2011.10.5.)