精神科Q&A

【2111】認知症の服薬内容から生じた疑問


Q: 母親は現在82歳。67歳の時一時的せん妄がおこりましたが、その後何事もなく、75歳頃から、同じものを大量に購入する・物忘れがひどい等、認知症の初期症状が見られはじめ、アルツハイマー型認知症と診断されました。その当時からアリセプトを服用、昨年頃から、問題行動が多くなり、薬が追加されました。問題行動の症状としては、夕方頃から家の外からの恐怖が強くなり自宅の戸締りを異常にする。庭を誰かが歩いているような気がする。窓から誰かが覗いている気がする。死んでいる飼い猫がさっきまでココにいた。死でいる兄弟が家に帰って来ていた。といった具合に妄想と記憶交錯が激しくなりました。当初、戸締り恐怖が強迫神経症の様に、何度も同じ場所の施錠を確認、あらゆるドアや窓に外部からの侵入を防ぐために家具や服などでバリケードを作るなど、夕方から朝まで繰り返し行うため、抗不安薬ソラナックスとデパスを処方されていました。不安感がクローズアップされての処方と思います。しかし、問題行動は収まらず、ビデオのコンセントをハサミで切る。電話線を切るなどの行動もあると伝えると、統合失調症の薬を処方されました。朝リスパダール0.5mg 夜、一日おきにレボトミン5mgです。
 主治医は娘である私を信頼してか、薬の量は母親の様子を見ながら調整しなさい、と言われています。認知症の外来で診ていただいている主治医は内科の先生です。居住地に認知症を診る精神科が無いためです。現在の主治医に不信感は今までなかったのですが、服薬に統合失調症の薬が出て問題行動は確かに収まりつつありますが、日中の様子は常にボーッとしている、笑うこともなくなった。味覚や臭覚、暑さなどの知覚や記憶が明らかに一層低下した。などの症状は服用後顕在化しました。このことから内科の医師が抗精神薬を上手に使えるのか。精神科の認知症を専門にしている医師でも同じような処方をするのだろうか。という不安感や戸惑い感にさいなまれるようになりました。日頃、介護の生活で心身共に疲弊していますと、自分の考えに対して、これで良いのか。という思いを何処かできちんと処理したい。という思いが生じます。介護の専門機関の相談は介護者の気持ちに沿うだけで、事実、このやり方が良いか悪いかのすっきり感が無いため、精神科のお立場での見解をお聴きしたいと思いメールしました。


林: これはアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)にしばしば伴う精神症状です。対応としては、少量の抗精神病薬を用いるのが一般的です。

主治医は娘である私を信頼してか、薬の量は母親の様子を見ながら調整しなさい、と言われています。

このメールからは、この指示がどの時点で出されたのか不明です。もし最初の処方の時点で出されたのであれば、疑問といえます。けれども、

服薬に統合失調症の薬が出て問題行動は確かに収まりつつありますが、日中の様子は常にボーッとしている、笑うこともなくなった。味覚や臭覚、暑さなどの知覚や記憶が明らかに一層低下した。などの症状は服用後顕在化しました。

このような状態になったために、様子を見ながら家族が調整するという方針に変更されたのだとすれば、現実的には妥当といえます。

内科の医師が抗精神薬を上手に使えるのか。精神科の認知症を専門にしている医師でも同じような処方をするのだろうか。という不安感や戸惑い感にさいなまれるようになりました。

このメールからは詳しい状況が不明ですので、明快な回答は困難ですが、今の処方は決して不合理なものとはいえません。

(2011.9.5.)


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