精神科Q&A
【2100】パワハラ上司について会社側が対応策を打ち出してくれるまで仕事を休むべきという診断書
Q: 30代男性会社員です。会社の上司によるパワハラと自分のミス多発により、将来が不安になり、寝付きが悪くなり眠りについても数時間おきに目が覚め、朝もいつも起きる時間の1〜2時間前に目が覚めてしまうようになってしまい、20日ほど前に妻に連れられ心療内科を受診しテトラミド錠、クアゼパム錠、サインパルタカプセルを処方され服用し、眠れるようにはなりましたが、気分は特に変化はありません。カウンセリングと検査(作文みたいなもの)を受け、その結果で診断書を出してもらったのですが、病名に「抑うつ状態」と書かれ、「上記にてXX年XX月XX日より当院にて通院加療中である」という内容でした。妻は心配しており原因となっている上司との関係を会社側が何か考えてくれるまで休業させてもらえないのかと言っております。現状、私も上司に罵られたこともあり自信をなくしており、ちょっと仕事も手につかないような状況です。このような場合、上記のような内容の診断書を会社側に見せて休職させてもらえるのでしょうか? 診断書に「休養が必要」とかと書かれてないと休職は難しいでしょうか?
林: このような場合、休養が必要であれば、診断書にはその旨を明記するのが普通です。すなわち、「上記にてXX年XX月XX日まで休養加療を要する」と記すのが普通です。
このケースの診断書ではそのように記さず「上記にてXX年XX月XX日より当院にて通院加療中である」だけの記載とされた理由は、このメールからは不明です。
ひとつだけご指摘するとすれば、
原因となっている上司との関係を会社側が何か考えてくれるまで休業させてもらえないのか
このような考え方が正しいかどうかは、かなり深くお考えになる必要があるということです。つまり、これは、「悪いのは上司であり、自分は被害者である」ことが前提となっていますが、客観的にみて本当にそうなのかどうか。これに関連して、
会社の上司によるパワハラと自分のミス多発により、
と冒頭に書かれていますが、その「パワハラ」とは具体的にどのようなものだったのか。本当に「パワハラ」といえるレベルのものだったのか。上司から部下への通常の叱責ではなかったのか。「パワハラ」なるものと「自分のミス多発」の時間的順序はどうだったのか。ミス多発を上司から強く叱責されたというのが真相ということはなかったのか。
さらにいえば、
現状、私も上司に罵られたこともあり自信をなくしており、ちょっと仕事も手につかないような状況です。
とのことですが、それは質問者自身の弱さの表れに他ならないのではないか。
以上はすべて可能性の指摘にすぎません。現実は酷いパワハラであったのかもしれません。けれどもそれはこのメールからはわからないことですし、さらにいえば、「パワハラを受けた」という当事者からの説明をいくら詳しくお聞きしてもわからないことです。
この【2100】の質問者の病名は、診断書では「抑うつ状態」とのこと、それはそれで適切な記載と思われますが、公式に病名をつけるとすれば「適応障害」ということになるでしょう。「上司からのパワハラに起因する適応障害」という外見を呈するケースでは、「上司の側に問題がある」場合もあれば、「適応障害となった側に問題がある」場合もあります。後者の場合、診断書を出してもらって仕事を休むことは、本人の問題を隠蔽ないし先送りすることにもなりかねないものです。これは「適応障害」と「擬態うつ病」にかかわる、現代では多数発生している問題で、擬態うつ病 / 新型うつ病 実例からみる対応法 にもいくつかの実例とともに詳解しましたのでご参照ください。
(2011.8.5.)