精神科Q&A
【2097】60歳の母の様子がおかしくなった
Q: 20代女性です。先生の本を拝見してこちらにたどりつきました。 実家の60歳の母の様子がおかしいのです。 母の症状は、・ひとりでぶつぶつ、仕事のこと、家族のことを話しながら誰かと会話している。ニヤニヤしている。(頭の中で考えていることを声で出しているのかな?と感じます。)・ひとりで暗い部屋にじっとしていることが多い・足をバタバタさせながら笑いながら走る・電話の声が暗く、少しおびえている・家事ができなくなった。少し家事をしたらすぐに座っての繰り返しでとても時間がかかる(洗ったつもりのお皿がいつも汚れている。)・車の運転中家や人に接触して2回事故を起こす・通帳をなくす・目の前鍵があるのに鍵がないといって予備の鍵をつくる・ギョウザを作るときに、大量の油を使い、油がはねたら、その中に水を入れようとする・ゴム手袋に指を入れたり伸ばしたりして子供のように笑う・昔の嫌な出来事について怒ったり、昔、ネコを飼ってダメと言ってごめんね。と急にあやまったりする ただ、ひとりで話している時に何を話しているの?と聞くとふっとわれに返ったように何も話してないよと回答してきます。 母の自覚症状は、頭が痛いことや、下がひりひりするということのみです。その薬をもらっていました。 にやにやしていることなどを私が医師に伝えたら、その症状を把握してなかったため薬が合っていなかったので妄想を消す薬に変えるということでした。 MRIの結果は、認知症や脳の外傷がないため、精神的なものだろうとのことでした。 また、最初飲んでいた薬が強すぎて眠気で事故を起こしたのだろうとのことでした。 精神的なものとだけ判断された場合、この先どうしていいか分かりません。 60歳でこのような症状になることは少ないと聞かされていますが、何か大きなショックがあって人格を変えようとしているのでしょうか? 母が母でなくなっていくようで、どうしてよいかわからずにいます。 何か、該当する病名や事例はありますでしょうか? よろしくおねがいいたします。
林:
60歳でこのような症状になることは少ないと聞かされています
そんなことはありません。
このメールからは発症からの経過が不明で、つまり、いつごろからこのような症状が始まったのか、そしてどのような経過をたどって今の状態になったのかが不明です。発症と経過は診断名推定のためには非常に重要な情報ですので、漠然としたことしたお答えできませんが、この年齢でこのような症状が出た場合、まず考えられるのは脳の器質性の疾患(たとえば認知症)、次に考えられるのは統合失調症などの精神病です。また、身体的な病気の症状としてこうした精神症状が出ることもあります。
MRIの結果は、認知症や脳の外傷がないため、精神的なものだろうとのことでした。
MRIだけで「認知症がない」かどうかの診断はできません。もしいま診ていただいている先生が本当にそのように判断されたのであれば、その先生は信頼できませんので他の医師に診断を求めるべきです(本当はそのようには判断していなくても、医師がそのように説明することはあり得ます。たとえば、症状と経過からみて認知症とは考えられず、実はMRIを撮る前から認知症でないことは確診されていた場合など)。
また、仮に認知症ではないとしても、
精神的なものだろう
という言い方は漠然としていて、何を指しているのか全くわかりません。
(2011.8.5.)