精神科Q&A
【2096】統合失調症の娘の幻聴に対する対応について
Q: 37歳一人住まいの統合失調症の娘が、ここしばらく通院服薬のおかげで陽性反応をすることが少なく、穏やかな生活をするようになってきたと喜んでいました。
ところが、4ヶ月前ごろから同じマンションや近所の住人から自分の病名のことで陰口や意地悪（四六時中の集団による行動の監視と妨害…対人恐怖があり外出をせず家にこもっています）を毎日繰り返され、一日として安穏な日が送れないので転居すると言い出しました。 やむなく私と二人で借家探しを続けていた間に、通りすがりの人が「私をキチガイと隣の人に教えている」。物件を見ている間に通行していた二人連れの夫人が「あんな子持ちの悪い人に住んでもらいたくないね」と自分の顔を見て言った。などとおろおろと落ち着かない態度をとりました。以前にも陽性症状がひどかったときに、ひどい幻聴が出たことがありましたので、私はまた極度の対人間のストレス下に長期間さらされたので不幸なことに幻聴が出てきたと感じました。同時に、本人には本当に見えたり聞こえたりすることは知っていましたがそれは幻聴だと知らせることで苦しみを軽減させようと考え、「聞こえる」と本人がいう方向にテープレコーダーを向け録音し、再生音を聞かせ”何も言われていない”ことを知らせようと半ば力づくの強引な方法をとりました。これがまったくの間違いだったようで、娘の幻聴・幻覚・妄想は急速にひどくなるとともに、自分に聞こえることを”幻聴”と打ち消して認めない父親の私を全く信頼しなくなり、私におびえ恐怖感さえ表すようになりました。私が強制入院（最も嫌がっていること）をさせようとしていると思い込んでいます。
通院は続けていますが、現在の自分の状況を主治医に伝えることもしていないようです（強い薬を処方されると副作用がきついので）。親がDrに訴えることも非常に嫌がります。ごく最近、深夜路上などでの奇異な行動（自傷他害はありません）が目立つので１１０番されたりして3日連続で警察に保護され、親としてなすすべがありません。通常ならば入院させるのが当然でしょうが、入院での集団生活を死ぬほど嫌がっている本人の気持ちを知っているだけにできません。 日常生活能力レベルも大変低く、直前まではヘルパーの世話になっていましたが、気を遣いすぎてわずらわしい・かえって緊張するとの理由で今は誰もヘルプする人をつけていず、数日おきに電車で1時間ほどかけて私が短時間の手伝いに行き、すぐに追い返されています。妻は、娘の20年以上に及ぶ世話で介護認定2級となり、娘との同居は不可能です。
これまで私は明らかに間違った対応をしたと思います。現在取り急ぎお教えをいただきたいことは、『娘の幻聴・幻覚に対してどのように対応すればよいか』ということです。娘の苦しみを見るにしのびません。お力をおかしください。
林:
これまで私は明らかに間違った対応をしたと思います
残念ながらその通りです。
しかし、ということは、対応をあらためれば、娘さんの症状の改善が期待できるということです。ぜひ今からでも娘さんのために最善の対応をお取りください。
以下、質問者のこれまでの誤った対応についてご説明します。
やむなく私と二人で借家探しを続けていた
誤っています。
統合失調症では近所に対する被害妄想が出ることはよくあります。すると本人は引越しを希望されることも多いのですが、引越しても何の解決にもなりません。病気そのものを治療しなければ改善は望めません。
それは幻聴だと知らせることで苦しみを軽減させようと考え、「聞こえる」と本人がいう方向にテープレコーダーを向け録音し、再生音を聞かせ”何も言われていない”ことを知らせようと半ば力づくの強引な方法をとりました。これがまったくの間違いだったようで、娘の幻聴・幻覚・妄想は急速にひどくなるとともに、自分に聞こえることを”幻聴”と打ち消して認めない父親の私を全く信頼しなくなり、
その通り、誤っています。
娘の幻聴・幻覚・妄想は急速にひどくなるとともに、自分に聞こえることを”幻聴”と打ち消して認めない父親の私を全く信頼しなくなり、
誤った対応からくる、当然の結果です。
通常ならば入院させるのが当然でしょうが、入院での集団生活を死ぬほど嫌がっている本人の気持ちを知っているだけにできません。
誤っています。
そのお気持ちは理解できますが、入院させなければ症状はさらに悪化し、娘さんにとってさらに不幸な結果になります。親として娘さんのことを真剣にお考えになるのであれば、入院させてあげなければなりません。
数日おきに電車で1時間ほどかけて私が短時間の手伝いに行き、すぐに追い返されています。
誤っています。
これもお気持ちはわかりますが、このようなことをなさっても、適切な治療を始めなければ、病気は悪化していくばかりです。
現在取り急ぎお教えをいただきたいことは、『娘の幻聴・幻覚に対してどのように対応すればよいか』ということです。
精神科で治療を受ける以外に方法はありません。
(2011.8.5.)