精神科Q&A

【2093】長男の妻の長引く病気は長男が原因だと言われました


Q: 長男は海外転勤になるとほぼ同時にお付き合い一年ほどの今の妻と結婚しましたが、諸事情のため半年遅れで長男のもとへ行きました。五ヶ月くらい経った頃より現地で家族ぐるみのお付き合いのかたがたとの付き合いが苦痛のようでだんだん気持ちが落ち込み不眠の症状が出始めたため現地の病院診察をうけました。診断は適応障害とのことでお薬の服用を始めました。それから二ヶ月後一時帰国時、夫婦の意見が合わず喧嘩になりそれをきっかけに症状がひどくなり長男一人で海外へ戻りました。嫁は実家に残り日本で診察を受けうつ病と診断されたようです。その後治療を受け続けているにもかかわらず7ヶ月が経つ現在も食欲、意欲が何もなく薬のせいかほとんど寝ているような状態のようです。最近、主治医の先生と長男夫婦が会い話しをした時、長男のことが原因だと言われたそうです。現地でも嫁の病院に付き合い、精一杯尽くしたつもりの長男は寝耳に水の話にショックをうけ本人と話しましたら被害妄想が激しくまったく話にならないそうです。こんな状態の現在、先生に伺いたいことはうつ病だとすれば治療を受けているにもかかわらず10ヶ月も快方に向かわないものでしょうか? うつ病で被害妄想の症状はあるものでしょうか? 何か他の病気の可能性があるのでしょうか? 嫁は海外生活には慣れていますのでそのストレスは少ないものと思われます。本人が病名に関しては口を閉ざしています。


林: このメールの情報内容は不確実なことばかりのため、お答えすることは不可能です。すなわち、

うつ病と診断されたようです

「ようです」では、医師の判断が本当はどのようなものであったかわかりません。

薬のせいかほとんど寝ているような状態のようです。

「薬のせい」というのは、質問者の判断でしょうか。だとすればその根拠は何でしょうか。

最近、主治医の先生と長男夫婦が会い話しをした時、長男のことが原因だと言われたそうです。

具体的にどのように言われたのでしょうか。また、言われたのはご夫婦いっしょのときか、それともご長男だけに医師から言われたのか。それによっても医師の説明のニュアンスは異なってきます。

本人と話しましたら被害妄想が激しくまったく話にならないそうです。

これが最も重要な点で、その被害妄想とは具体的にどのようなものだったのでしょうか。ある言動が被害妄想かどうかということは、すでに専門的な判断ですので、質問者や、あるいはご長男の、「被害妄想」という判断は誤っている可能性が否定できませんし、また仮に被害妄想であったとしても、その具体的内容が診断にはきわめて重要な情報になります。

うつ病で被害妄想の症状はあるものでしょうか?

十分にあり得ます。が、そもそもこの方がうつ病であるかどうかが不明ですし、被害妄想があるかどうかも不明ですし、被害妄想だとしてもその内容が不明ですので、「うつ病に被害妄想があり得る」という事実は、このケースとの関連性は希薄です。

何か他の病気の可能性があるのでしょうか? 

それもあり得ます。というより、この方についての情報量が足りませんので、どんな病気でも可能性としてはあり得ます。

嫁は海外生活には慣れていますのでそのストレスは少ないものと思われます。

それは単純すぎる推定ではないでしょうか。

本人が病名に関しては口を閉ざしています。

ということは、ご本人は、うつ病とは別の病名を医師から告げられているということでしょうか。だとすれば、このメールの基調にある「うつ病だとしたら・・・」という前提にはあまり意味がないということになります。

治療を受けているにもかかわらず10ヶ月も快方に向かわない

そのような状況で苦悩しておられることはお察しいたします。けれども、事実についての確認があまりに曖昧な状態では、適切な対応をお考えになることは不可能です。不確実な推定に基づいて行動しても、良い結果になることは期待できません。まず事実をひとつひとつ確認してください。

(2011.8.5.)


精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る