精神科Q&A

【2048】何年か前から現実感がありません


Q: 10代男性です。何年か前から現実感がありません。特別日常生活に支障はありません。しかし、こうしてメールを打っていることにも妙な違和感を覚えるのです。いつからかははっきりと分かりません。気がつくとこのようになっていました。記憶に支障がある訳でもないのに、何故かこれが始まったのがいつからなのかだけが分かりません。 一度、適応障害を起こしたことがあり、その時に医師にも相談したのですが、特に問題はないと返答されました。適応障害の治療も終わり、今はアルバイトも出来ます。 
 症状を詳しく申し上げますと、意味も無く遠い感じがするのです。目に見えている遠近法は狂っていません。体を動かすのにも支障は無いのですが、目に映るものが他人事のようなのです。 自分の目に映る映像ではなく、モニターを見ているような気分です。それでも遠近を間違えるようなことは無く、体は動きます。だけれど実感だけが取り残されているような、そんな気持ちです。 適応障害の時の医師には、君のようなタイプの人は精神障害を起こしづらいと言われましたが、そんなことはないのです。今までも自分の考えが他人に聞かれているような妄想に取り付かれたり、夜眠っていると両親に包丁で刺される妄想や、部屋が以上に大きくなる錯覚、世界中の人から罵声を浴びせられる幻聴など、いろいろなものを体験してきました。そのたびに無視をしてきただけなのです。それがただの妄想だと理解できたからです。 私は幻覚・妄想と現実の区別がついています。しかし、区別がつくだけで実感がまるで湧いてこないのです。人にはよく変わっていると言われますが、そういったところが起因しているのかもしれません。  あと、非常に気になっているのが適応障害の時に処方された薬のことです。名前を忘れてしまって恐縮なのですが、二種類の薬を出されました。毎日飲むものと、精神的に苦しくなったら使うものです。そのとき精神的に苦しくなったら使う方の薬は、使うと逆に苦しくなりました。普段から現実感がないのに、そこからさらに現実感が失われて行くようで、とても怖い思いをして、そちらの方は二度と飲みませんでした。  断片的で申し訳ないのですが、私の症状はなんなのでしょうか。文面だけでは分からないことも多いと思いますが、先生の答えをお聞かせください。


林:
意味も無く遠い感じがするのです。目に見えている遠近法は狂っていません。体を動かすのにも支障は無いのですが、目に映るものが他人事のようなのです。 自分の目に映る映像ではなく、モニターを見ているような気分です。それでも遠近を間違えるようなことは無く、体は動きます。だけれど実感だけが取り残されているような、そんな気持ちです。

これは離人と呼ばれる症状です。
離人は、統合失調症でも見られるといわれていますが、この【2048】のケースの離人はいわば「きれいな」離人症状で、統合失調症らしい離人とはいえないと思います。

けれども、

今までも自分の考えが他人に聞かれているような妄想に取り付かれたり、夜眠っていると両親に包丁で刺される妄想や、部屋が以上に大きくなる錯覚、世界中の人から罵声を浴びせられる幻聴など、いろいろなものを体験してきました。

これらは逆に統合失調症らしい症状であるといえます。が、もう少し具体的な描写がほしいところです。この記載ですと、解離かもしれないとも思われます。

結論として、この【2048】のケースの診断名はわかりません。適応障害で治療を受けたことがあるとのことですが、その時の詳しい症状も、診断のためには重要な情報であるといえます。その時に統合失調症の前駆症状を思わせるものがあれば、診断は統合失調症に傾くことになりますし、解離を思わせるものがあれば、解離に傾くことになります。


◇ ◇ ◇

【2000】から【2078】までの回答は一連の流れになっています。【2000】、【2001】、・・・【2078】の順にお読みください。


(2011.6.5.)


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