精神科Q&A
ARMS (At Risk Mental State) の原文は以下の通りです。(適宜、日本語で説明を付します)
(1) Attenuated psychotic symptoms
「微弱な精神病症状」という訳語をあてられるのが普通です。
・presence of at least one of the following symptoms:
ideas of reference 関係念慮が定訳ですが、精神科Q&Aでは被害妄想的な過敏さと呼びます。
odd beliefs or magical thinking 奇妙な信念または魔術的思考; 精神科Q&Aでは超自然的・神秘的思考と呼びます。
perceptual disturbance 知覚の混乱
paranoid ideation 妄想様観念が定訳ですが、精神科Q&Aでは妄想のような考えと呼びます。
odd thinking and speech
odd behavior and appearance
さらに、これらの症状の確信の強さや出現の頻度や持続期間が規定されています。
(2) Brief Limited Intermittent Psychotic Symptoms
「短期間の間歇的な精神病状態」という訳語をあてられるのが普通です。
・presence of at least one of the following symptoms:
ideas of reference
magical thinking
perceptual disturbance
paranoid ideation
odd thinking and speech
odd behavior and appearance
程度の強さが(1)より強い。持続は1週間以内で、自然に消失する。などが規定されています。
(3) Trait and State risk factors
「遺伝的なリスクと機能低下」という訳語をあてられるのが普通です。
first-degree relative に、統合失調症、または、統合失調症型パーソナリティ障害の人がいることを指して「遺伝的リスクあり」と規定しています。
この項目の中に decrease in functioning があり、これを精神科Q&Aでは生活レベル低下と呼んでいます。原文ではGAFという尺度によって判定することが規定されていますが、質問メールに基づいた精神科Q&Aではそこまで厳密に判定するのは不可能ですので、GAFにはこだわらないこととします。
原文にはさらに細かい点がありますがここでは省略します(これですでにかなり細かいですが)。さらに詳細を確認したい方は文献にあたってください。
なお、「ARMS」と聞きなれない用語を使うのは、「前駆症状」と呼ぶことによる誤解を避けるためであると【2007】でご説明しましたが、医学論文の中には、ARMSを 精神病前駆状態 prodromal state of psychosisなどと表現している物もたくさんあります。
そこで精神科Q&Aでは、ARMSという用語ではなく、暫定的にこれを「統合失調症の前駆症状疑い項目」と表現することにします。