精神科Q&A
【1977】妻が子どもの幼稚園のある友達を異常に嫌悪している
Q: 30代の妻のことについての相談です。 今年から4歳の次女が幼稚園に通い始めたのですが、次女の幼稚園のある友達を嫌っており、次女がその子の名前を出すだけで非常に嫌がります。先日は娘が送迎の車の中で、突然脈絡もなくその子の名前を言い出し、妻がやめるように言っても(面白がったのか)何回も繰り返し言い続けたそうで、私の帰宅後に泣きながら「次女から嫌がらせを受けた」と訴えるほどです。 また、妻は次女がそのような嫌がらせをしているのではなく、誰かが妻自身に嫌がらせをするために次女に言わせている、というような事を訴えています。また、誰かが妻を精神的に狂わせるために嫌がらせをしている、とも言います。その”誰か”とは一体誰かと私が尋ねると、はっきりとは答えませんが私の父母と考えているようです。妻は私の父母の関係はあまり良くありません。妻は私の父母から嫌われていると考えているようです。しかし、私の父母が妻の嫌いな次女の友達の名前を知るはずもなく、また遠距離での別居のため、帰省も年に一度程度、電話で次女と話す機会も月に一度するかしないか、という状況でそんなことは常識的に考えられません。 妻には「本当にそう考えているのなら心療内科に行くべき」と言ったのですが、本人は「本当はそうは思っていない。大丈夫だから病院にはいかない。」と言って聞きません。 また、長女が幼稚園に通っていた時も、「バス通園の待ち合わせ場所で、他のお母さん達が自分のいないときに陰口を言っている」と私に訴えて、バス通園をやめたこともあります。 妻は20才前後の頃1年ぐらい引き篭っていた時期があるらしく、精神的に不安定な面があることは否定できません。 私の感覚では、妻の言っていることは妄想としか思えないのですが、一方で他人の些細な発言を重く受け止めすぎているだけとも考えられ、判断がつきません。 このような状態の妻を受診させた方が良いでしょうか。
林: 奥様は統合失調症(または妄想性障害)だと思います。精神科の受診が必要です。
統合失調症の被害妄想は、初期の段階では、漠然とした被害感であることが多く、誰かわからない他者や、あるいは世界全体が、自分に対して敵意のようなものを持っているというような性質の感覚です。この段階では周囲は症状に気づかないことも多いのですが、さらに進むと、その被害妄想の対象がある程度特定されてきます。すると、「悪口を言われている」「監視されている」というような被害妄想の訴えになります。
この【1976】のケースでは、訴えの内容が統合失調症にかなり典型的なものであることに加え、
妻は20才前後の頃1年ぐらい引き篭っていた時期があるらしく、
この事実とあわせると、統合失調症の可能性はきわめて高いといえます。「あるらしく」という表現からは、質問者は当時の様子を詳しく知らないと思われますが、この20歳前後に統合失調症を発症していたとみるのが最も妥当です。治療を受けて回復したのかもれません。結婚に際し、治療歴を隠すことは時々あることです。
そして、
精神的に不安定な面があることは否定できません。
この表現からは、現在までも不安定な面があったとも読み取れますが、もしそうだとすれば、はっきりした被害妄想に至らないまでも、統合失調症の症状が少し出ていたのかもしれません。
以上より、現在の奥様の言動は、
他人の些細な発言を重く受け止めすぎているだけとも考えられ
とはいえず、
私の感覚では、妻の言っていることは妄想としか思えない
それが正しい判断であるといえます。
そして、被害妄想の対象が
次女の幼稚園のある友達を嫌っており、
というように特定されているということは、その対象に対して何らかの攻撃的な行動に出てしまうことも考えられます。
このような状態の妻には精神科を受診させた方が良いでしょうか。
「精神科を受診させた方が良い」のではなく、精神科を受診させなければなりません。
適切な治療を受ければ、今の妄想は消失に向かいます。
(2011.4.5.)