精神科Q&A
【1969】妄想癖は病気でしょうか
Q: 30代。独身の公務員です。 5年前、町村合併という大きな変化がありました。 合併3年目に異動となり、少人数の部署で働くことになりました。その際、様々な事情で、私と50代男性の二人きりで業務をこなすことになったのですが、この男性が毎日酒臭く、仕事を満足にこなせないため、私は日々イライラしたり落ち込んだりしていました。 その男性は年度途中で退職し、私一人で深夜まで業務をこなす日々が数カ月続きます。 合併四年目、新しい上司と新人が配属されました。 50代の新しい上司は仕事をさぼるのが常、また話し好きで、おしゃべりをベラベラ続けるタイプの男性です。 20代の新人は杓子定規な性格で、良い意味でのルーズさに欠け、また要領が悪く、「気」とか「間」がない男性です。 この2人の世代に挟まれた30代の私は、指導しても懇願してもうまくいかずについカリカリしてしまい、仕事は厳しくするものだといった内容の言葉を投げつけてしまいます。 そのせいか、私がいない時を見計らって、上司と新人が仕事の話を進めているようです。 私は「相手が悪い」と内心思っているのですが、その半面で「己に実力がないせいだ」と自分を責めます。また、私の「正しさ」を押しつけること自体が間違いではないかとも思うのです。
最近は、・ひとり言が増える。・目頭に涙がたまっている感覚。・眠れない。・休日は家にいて、ひとりで過ごしたい。・他人のささやかなミスが許せず、物にあたる。・自分を責める(自殺というより、この世から消えたいという気持ち)・今まで好きだった食べ物、音楽などへの興味がパタリと途絶えた。・そのくせ、買い物依存に陥っている(収入よりも多い支出がやめられない) 自分でもおかしい事を自覚し、診療を受けたいと考えています。
ここで恥ずかしい話なのですが、私には妄想があり、妄想の中で、私はフィギアスケート選手なのです。選手としてオリンピックにも出場し、金メダルまでとっています。 この妄想は学生の頃からありました。もちろんスケート経験はありません。これが「嘘」だということも頭の中でわかっています。でも、金メダリストとしての立場で、社会の出来事等へのコメントを頭の中で考えている自分がいます。 最近では、選手だけではなく、自分が総理だったら、芸能人のこの人だったら…などと妄想しているのです。 きっと自分の事が嫌いで、妄想や空想に逃げているんです。 このような妄想(空想)は誰でもするものでしょうか?妄想の中に理想の自分を仕立てあげ、現実の自分を支えようとするのは、他の人でもしていることですか? また、精神科の診療を受ける際には、上記の症状だけではなく、妄想の内容も話した方が良いのでしょうか?
もうひとつ質問です。この前職場でメンタルヘルス講習会があり、その中で講師が、「自分からうつ病と言う人は、本当のうつ病ではない」という話をされました。 これを聞き、私は「偽装うつ症」ではないかとも思うのです。実は自殺未遂を10代の頃に起こしており、この頃から「死」を漠然と考えているのですが、この事は家族にも誰にも話していません。 私がこの話をして、信用してくれる人がいるのでしょうか。不安です。 頑張っても悪い方向に進んでいる心地で、フツリと切れそうです。 アドバイスをお願いします。
林:
ここで恥ずかしい話なのですが、私には妄想があり、
「妄想」と書かれていますが、これは妄想とはいえません。自分がフィギアスケートの選手、総理大臣、芸能人などと考えるとのことですが、それが現実でないと自分ではっきりわかっており、たとえ一時的にでも現実と区別がつかなくなったり、現実の言動の中にその考えが侵入したりすることがない以上、妄想とはいえません。「妄想癖」と呼ぶのも誤解を招きやすいので、「空想癖」が最も適切な呼び方でしょう。
きっと自分の事が嫌いで、妄想や空想に逃げているんです。
おそらくそうした要因があるのだと思います。
また、精神科の診療を受ける際には、上記の症状だけではなく、妄想の内容も話した方が良いのでしょうか?
今の症状と空想癖に関連があるかどうかによります。
もっとも、関連があるかどうかは容易には判断できませんので、精神科医には一応は話しておいたほうがいいでしょう。但し最初の時点では、私の上の回答と同じように、「空想だとわかっているのなら心配ないですよ」くらいの説明で終わると思います。しかしそれでも一応は話しておいたほうがいいという理由は、治療が進んで、性格などが症状に大きく影響していると判断され、強力な精神療法が必要ということになったとき、この空想癖がクローズアップされる可能性があるからです。
「自分からうつ病と言う人は、本当のうつ病ではない」
それはそういう傾向があるということにすぎません。一つひとつの項目からは、うつ病かどうかの判断はできません。
それは、「うつ病」ではありません! のp.78の「うつ病診断の目安」と題した表にも、本人が自分が病気であることを強調するのは、うつ病らしくない指標の一つとして書いてあります。が、表の題が「目安」であることからもわかるとおり、「自分からうつ病と言う」だけで、その人がうつ病でないなどとは到底言えません。
(2011.3.5.)