精神科Q&A
【1906】自分を卑下する性格は、虐待の後遺症でしょうか
Q: 17歳女性です。私は自分を酷く卑下してしまいます。例をあげると、私は周囲から(自慢などではなく)可愛いと言われるのですが、何度鏡を見てみても私にはそうは思えません。見れば見るほど自分が醜く見えてきてしまいます。 また、可愛いという周囲の言葉がまったく信じられず何かたくらみがあって、そういった嘘をついているのではと思ってしまいます。たくらみなんて無いと言い聞かせるのですが、やはり上記のような考えに陥ってしまい、周囲をそういう風にしかみれない自分が嫌になって、また自分を卑下することを繰り返してしまいます。 他にも自分の性格も自分自身もやはり醜い性格だとみなしてしまいます。自分の行動一つ一つに悪いところを見つけては、自分は嫌な人間だと考えてしまったり、親からの愛が感じられず、一時期不登校になって友達もいないし、他人を信じることができず、誰かと友人とか恋人だとかになれそうにないので、自分は誰からも必要とされていない存在価値がない人、つき合いもろくに出来ない馬鹿だと思ってしまいます。 自分でもマイナス思考なのは分かっていて何度も改善しようと試みてみましたが効果は出ず益々自分が嫌いになるだけでした。
頭の片隅では大まかながら、こうなってしまった理由も分かっています。幼少期の父からの虐待と、両親の離婚後、母に出来た恋人から思春期に受けた性的暴行(これは誰にも話せていません…)、母の異常に弟へと偏った愛情が原因ではないかと…。でも、ここにこうして書き込んでいる今もそうですが他人の行動のせいにしかできない自分に嫌気がさし吐き気がしてくるので、なるべく考えないようにしています。あまりに自分が嫌いすぎて自殺を考えたこともありました。
また、上記のような感情も思考も、周囲には知られたくない、知られるのが恥ずかしいという思いがあって、現実ではなくネットで何か策は無いかと探したところ、ある方に一度精神科に行ってみてはと勧められました。しかしながら、相手がお医者様でも自分の姿を見せて自分の声で相談することに一種の羞恥と恐怖のようなものを覚えてしまい、どうにも勇気がでません。そもそも、虐待の後遺症で自分を卑下する性格になるということがあるのでしょうか。そこで林先生、私が何らかの精神病にかかっている可能性があるのか教えていただけないでしょうか? ただの性格の問題なのでしょうか? やはり病院に行ったほうがいいのでしょうか?
林:
虐待の後遺症で自分を卑下する性格になるということがあるのでしょうか。
【1906】の質問者の性格が「自分を卑下する性格」といえるかどうかは別として、虐待が性格に関連している可能性はあります。
私が何らかの精神病にかかっている可能性があるのか教えていただけないでしょうか?
精神病ではないと思います。虐待との関連の可能性については、【1901】〜【1948】をお読みください。
ただの性格の問題なのでしょうか?
「ただの」性格の問題と、「ただの ではない」性格の問題 を、どう区別するかは難しい問題です。
【1901】から【1905】で説明してきたように、虐待はパーソナリティ障害と関連する可能性があり、パーソナリティ障害とは「性格の偏り」であるといえます。仮に【1906】の質問者の現在の性格が虐待と関連あるとした場合、それを「ただの」性格の問題と呼ぶのか、「ただの ではない」性格の問題と呼ぶのかはなかなか決めることができません。
やはり病院に行ったほうがいいのでしょうか?
現在の精神状態に強く悩んでおられるのであれば、行ったほうがいいでしょう。
◇ ◇ ◇
【1901】から【1948】までの回答は一連の流れになっています。【1901】、【1902】・・・【1948】という順にお読みください。
この【1906】のケースも
幼少期の父からの虐待と、両親の離婚後、母に出来た恋人から思春期に受けた性的暴行(これは誰にも話せていません…)
という過去があり、現在の精神状態と関連がある可能性があります。
【1901】から【1906】をお読みになると、虐待はその後のパーソナリティ(性格)に影響し、パーソナリティ障害の範疇に入る症状の原因であるという印象をお持ちになるかもしれません。臨床の実例でも、そういうケースが少なくないことは確かです。けれども虐待とパーソナリティ障害に因果関係ありと結論するのは容易ではありません。今回、【1901】〜【1948】まで一連のケースを掲載した大きな理由の一つはそこにあります。
この【1906】の質問者は
頭の片隅では大まかながら、こうなってしまった理由も分かっています。
と、虐待との関連を半ば確信しておられるようなことも言っておられます。けれども、虐待と現在の精神状態の関連性は「可能性」にとどまります。
(2011.1.5.)