精神科Q&A
【1904】8歳の時から頭の中に小人が出てくるようになりました
Q: 30代女性です。私は、子ども時代、父に厳しく育てられ、毎日びくびくしていました。記憶の中では、人のいつも顔色をうかがい、父に甘えた記憶がありません。父は仕事が忙しく、きちんと身の回りの事をしない私を呼びつけては、竹ざおで、何発も殴り、階段から、突き落とされた事もあります。8歳の私が、果物の皮を厚くむいたのを、父がゴミ箱の中からみつけた時は、生ごみのついたその皮を、正座して、目の前でえづきながら、食べさせられました。私は、父に心を許す事無く、「沈黙が一番」・・と内にこもってしまいました。そんな生活の中、8歳の時、いきなり、頭の中に真っ白い小人が溢れるように出て来ました。その小人達は、私の意志を全く無視して、家具を作ったり、あやとりをするのです。私は頭をかかえ、「やめて」と思うのに、小人達は全く無視。そして、しばらくすると、小人達は、すーっと消えていくのでした。その経験は小学校時代に5回程。大人になってからは、2回。回を重ねる事に、『じっとしていれば、小人はいつかいなくなる』そう学習し、怖くなくなりました。子どもの頃は、父に反抗できない苛立ちから、お金を破ったり、じゅうたんの毛をむしったりしていました。大人になり、その話を人にすると、それは小児精神病だよ・・と言われ、驚きました。そして、精神病はなおらないから、まだ私の心の中にあると言われたのです。私は大人になり、穏やかに暮らしていますが、時折、親と激しく喧嘩(父と分かり合えない苛立ちは慢性化している)すると、興奮のあまり、絶叫したかと思えば、謝り、思考回路が止まってしまう・・という事があります。今は落ち着いていても、私は病気なのかと不安になります。こどもの頃の私は精神的な病気だったのでしょうか?そして、これはなおるものでは、ないのでしょうか? 読んで頂き、ありがとうございます。
林: この【1904】に書かれている「頭の中の小人」は、解離性障害の一症状か、少なくともそれにかなり近いものです。そして、幼少時に受けた父親からの虐待が今の症状に関連している可能性があります。
大人になり、その話を人にすると、それは小児精神病だよ・・と言われ、驚きました。そして、精神病はなおらないから、まだ私の心の中にあると言われたのです。
これは、いったい誰に言われたのかが不明ですが、その内容はでたらめとは言わないまでも、不正確なものです。
この【1904】の解離という症状は、精神科での治療対象です。また、
時折、親と激しく喧嘩(父と分かり合えない苛立ちは慢性化している)すると、興奮のあまり、絶叫したかと思えば、謝り、思考回路が止まってしまう・・という事があります。
この症状も、解離と関連があると思われます。
けれども治療が必要かどうかは、明言できません。【1904】の質問者が、現在の精神状態でどれだけお困りかがはっきりしないことがその理由の一つです。もう一つの理由は、【1903】の回答にもあるように、このような症状はどの精神科医でも適切に治療できるわけではないので、安易に受診しても良い結果になるとは限らないからです。
◇ ◇ ◇
【1901】から【1948】までの回答は一連の流れになっています。【1901】、【1902】・・・【1948】という順にお読みください。
解離性障害は、現代の診断基準ではパーソナリティ障害からは独立した項目になっていますが、パーソナリティ障害と強い関連がある場合が少なくありません。特に【1903】でも説明したB群と呼ばれるパーソナリティ障害では、症状の一つとして解離が現れることがあります。
【1901】〜【1903】は性的虐待でしたが、この【1904】で受けていたのは性的ではなく肉体的・精神的な暴力です。
パーソナリティ障害とは、性的虐待だけではなく、その他の虐待も関連があり得ます。「あり得ます」というのは、【1901】の回答にあるように、定説とはいえないという意味です。
この【1904】は、解離と虐待(性的でない)に関連があり得るケースです。
(2011.1.5.)