精神科Q&A

 【1883】夫は覚せい剤をやめたのに、他人からもらった普通の薬をのむと精神症状が出ます


Q:  私も夫も30代です。主人は5年くらい前(独身時代)に覚せい剤を3年くらいやっていました。 5年前に結婚してからは、今現在も覚せい剤はやっていません。 お聞きしたい事は、主人は、病院で処方してもらった風邪薬や、バイアグラ、自分で購入した市販の栄養ドリンクや私が購入したダイエット薬などでは変わった症状は起こりませんが、他人からもらった栄養ドリンク、ウコン、通信販売の性欲促進薬?ダイエット薬などを口にすると、飲んだ日から2日間は@全く寝ないA全く食べないB無気力、仕事に行かないC性欲は増進するが勃起不全Dイライラという様な状態が続きます。
他人からもらった薬といってもCMでやっている様な普通の物で、違法な物ではありませんし、私自身がその薬を見ているので、おかしな物ではありません。 本人も他人からもらった物を口にすると、必ず同じ症状が出ると分かっているのですが、飲んでしまいます。飲んでしまうと、上記の症状により家庭の中が滅茶苦茶になってしまう事も本人はわかっているのですが他人から貰って飲む事をやめられないようです・・・。 必ず上記の様な症状が出てしまう事や、他人から薬を貰って飲んでしまう事がやめられないのは覚せい剤の後遺症でしょうか? 本人も飲んでおかしくなってしまう自分がイヤだと言って病院に行こうか迷っています。 薬を飲んでいない時には睡眠、食欲、性欲、気力、性格ともに正常です。くれる相手も、仕事仲間や上司で、夏バテや、二日酔いにと、好意で渡してくれている物です。 後遺症でしょうか? 病院に行けば治るものなのでしょうか? よろしくお願いします。


林: ご主人は覚せい剤をやめていません。

飲んだ日から2日間は@全く寝ないA全く食べないB無気力、仕事に行かないC性欲は増進するが勃起不全Dイライラという様な状態が続きます。

それは覚せい剤を飲んだ(または、注射・あぶりなど、何らかの方法で摂取した) からです。

5年前に結婚してからは、今現在も覚せい剤はやっていません。

あなたがそう信じているだけでしょう。

なぜそのようなことがいえるのか。第一に、ご主人の症状は覚せい剤摂取による典型的な精神症状だからです。第二に、覚せい剤をやっていても、家族などには覚せい剤をやっていないと話し、家族がそれを信じこんでいるのはとてもよくあることだからです。

他人からもらった薬といってもCMでやっている様な普通の物で違法な物ではありませんし、私自身がその薬を見ているので、おかしな物ではありません。

質問者はだまされているのでしょう。
最も考えられるストーリーは、ご主人は質問者に隠れて覚せい剤の摂取を続けており、しかし精神症状が出てしまっていることをうまく説明するため、質問者には「友達からもらった普通の薬を飲むとどうもおかしくなる」というような嘘をついているということです。そもそも、

くれる相手も、仕事仲間や上司で、夏バテや、二日酔いにと、好意で渡してくれている物です。

これ自体、不自然な説明です。なぜ長期にわたって、他人がこのように薬をくれるのか。さらにいえば、「夏バテや、二日酔いに」という理由づけは、他人を騙して覚せい剤を始めさせようとする人が、覚せい剤を渡すときの常套手段です。いま現在ご主人の仕事仲間や上司がそのようなことをしているとは考えにくいですが、ご主人は過去にそのような形で覚せい剤をもらったことがあるか、人に渡したことがあり、その経験の一部を質問者への嘘に再利用しているのでしょう。これもよくあることです。もうひとつさらにいえば、覚せい剤などの違法薬物を摂取する人が、「これこれの理由で友達が好意でくれた薬だ」と家族などに説明する(もっとはっきりいえば、他人のせいにする)のもまたよくあることです。

おそらく質問者はご主人の説明を信じ切っており、この回答をお読みになると私がご主人に対し、さらには覚せい剤使用者に対し、悪意や偏見を持っていると感じられるかもしれません。しかし私にはそのような意図は一切なく、単に最も可能性の高いことを指摘しているにすぎません。薬物依存の患者さんが自分の薬物使用に関して嘘をつくのは公式ともいえる事実です。そしてこのことから、「薬物依存の人は嘘つき」ということが言われがちです。嘘をつくから嘘つきといえばそれまでなのですが、薬物依存の人の嘘は、単なる嘘つきとは異質のものではないかという印象を私はもっています。一種の症状と言ってもいいかもしれません。おそらくこれは、薬物が快感を引き起こすという脳への直接作用を持っていることに関係しているのではないかと思います。
  そして薬物依存の人の、自分の薬物使用に関する嘘には、多くの人が騙されます。「覚せい剤をやめているのに、まだ精神症状がある」とされている人(そして、家族の医師も、覚せい剤をやめているというのは本当だと思っている)を長くみていると、実は覚せい剤をやめていなかったことがあとになってわかることはよくあることです。

それはそうと、【1883】にはもうひとつ別の可能性があります。

他人からもらった薬といってもCMでやっている様な普通の物で違法な物ではありませんし、私自身がその薬を見ているので、おかしな物ではありません。

これが事実であって、しかしその中の何らかの薬によって、フラッシュバックが起きているという可能性です。けれどもこの可能性はきわめて低いと判断できます。なぜなら、第一に、そのような薬でフラッシュバックが起きることは非常に稀であること、第二に、もし普通の薬で何回も精神症状が出ているのであれば、その薬をやめればいいことであって、にもかかわらずやめていないのは、
普通の薬 → メールに書かれている精神症状
という現象が起きているのではなく、
覚せい剤 → 快感 → メールに書かれている精神症状
という現象が起きていると考えるのが合理的だからです。そして質問者が見せられている普通の薬は、本人による偽装工作と見るべきです。

というわけで結論は冒頭にお書きしたとおりで、以下のようになります。

後遺症でしょうか? 

違います。ご主人は今も覚せい剤を摂取しています。

病院に行けば治るものなのでしょうか?

覚せい剤をやめなければ治りません。


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