精神科Q&A
【1816】統合失調症の症状のため逮捕された兄を死ぬまで入院させておきたい
Q: 統合失調症の兄との同居を医師から同居を勧められました。兄は27歳で、私は23歳男性です。兄の症状の経過は、X年11月、兄は女性に対する付きまといで警察に逮捕される。被害者が被害届を出さなかったため、厳重注意で釈放。私の実家は大阪にあり、兄は東京で一人暮らしをしていました。身柄を母が引き取りに行くものの、駅で暴れたあと地面に寝そべるなどして抵抗したため、母はいったん大阪に帰る。その数週間後、再び女性に対する付きまといで逮捕される。又聞きなどで詳しい様子はわかりません。事実としてはその逮捕をきっかけに統合失調症と診断され緊急措置入院となりました。3ヵ月後に退院し、大阪に戻り通院する(X+1年2月)。このときの兄の住まいは、大阪の祖母の家に、祖母と共に同居をしていた。詳しい期間はわかりませんが、約3ヶ月間薬を服用していたとのこと。医師の判断により投薬は中止となりました。投薬中止の間、一人暮らしをはじめる(X+1年5月)。理由は祖母と険悪な仲になってしまったとのこと。その3ヵ月後、地元の駅で倒れる(X+1年8月)。医療保護入院となる。2ヵ月後退院。医師から同居を勧められるが、家族の我々はその指示を拒否する。兄は薬の服用を医師に約束し一人暮らしをはじめる。その4ヵ月後(X+2年2月)、実家を頻繁に訪ねるようになり、金の無心を繰り返す。母は数回お金を渡すものの、拒否する。すると兄から「殺す」など意味の解らない言動の留守番電話が入るようになり、ある日実家に怒鳴り込んできました。その後警察に逮捕、緊急措置入院となりました。 その後、再び医師は同居を母に勧めたそうです(父は2年前他界しています。アルコール依存症でした。兄が10歳の頃に離婚)。もちろん薬を服用させるためにです。我々家族は、兄が13歳頃から暴力を家族に振るうようになり大きな精神的苦痛を経験してきました。その当時から、意味不明な言動、幻聴を思わせる発言(家族が共謀して自分を殺そうとしている。といったもの)がありました。医師からはその頃から発症の疑いがある、と言っていたそうです。従って、同居は望んでいません。 そこで質問ですが、同居を回避する方法、すなわち統合失調症の家族を死ぬまで入院させる法的手段はありませんか? そしてもう一点、医師の立場として、同居を勧めることが患者の家族にどのようなリスクがあると考えますか?
林:
同居を回避する方法、すなわち統合失調症の家族を死ぬまで入院させる法的手段はありませんか?
ありません。
そしてもう一点、医師の立場として、同居を勧めることが患者の家族にどのようなリスクがあると考えますか?
このご質問は、私の答えによっては、同居を勧めた医師にあなたが反論する材料にしようという意図から出たものであることは明らかです。「リスク」として、家族が被害に遭うおそれがあるという答えをあなたは求めています。
しかし私はその意図の有無とは無関係に事実をお答えします。
1. 統合失調症の人が、他人に危害を加えるのは稀です。
2. 稀ということは、ゼロではないということです。
3. そのゼロではない危害の被害者は、他人ではなくご家族である場合が圧倒的に多いです。
(2010.10.5.)