精神科Q&A

【1782】うつ病で再発を繰り返していた妻の病状が安定し、ようやく希望が見えてきました‏(【1328】、【1397】のその後)


Q【1328】うつ病の再発を繰り返す妻の不安感 【1397】アナフラニールを服用したところ躁転しました の2回、お忙しい中、先生にお答えいただいた者です。その後、約2年が経過しました。必ず良くなると信じて、妻も子供たちも、私も期待を持ったり、がっかりしたり、怒りを覚えたりしながら、治療に取り組んできました。未だにその日々は続いているのですが、その経過を自分なりに整理するとともに、今後の治療方針について先生のご意見を伺いたく、再度、ご相談させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。【1397】の後の経過は次の通りです。
X+3年3月〜10月アナフラニールを200〜225mgに増量すると鬱からハイテンションになり、家でおとなしくしている約束を破って外出、買い物をしたり、多弁になったりするので、アナフラニールを175→150mgと減量せざるを得なかった。すると、テンションが下がるのだが3週間ほどでダウンして、一日中横になってしまう状態が続いた。そうした中、X+4 年4月の半ばよりトレドミンを開始。50mgから始めて100mg→150mgまで増量して経過を見るが、やはり症状が安定せず、うつを改善するために、アナフラニールを増量せざるを得なかった。その後、トレドミンは75→25→中止となり、変わってX+4年6月中旬よりデパケンを200mgから開始する。その後デパケンを1週間に200mgずつ増量しながら1000mgまで増量した後、リチウムを200mgずつ減量して中止した(主治医からは、妻のような波のサイクルの早い症状にはリチウムはあまり効果がなく、デパケンのほうがよいとの説明があった。)が、3週間程度のよい波と2週間程度の悪い波を繰り返す状態は改善しなかった。 当時の投薬内容。(1日量) アナフラニール(三環系)150mg〜225mgジェイゾロフト(SSRI)眠前50mg→100mg→50mg→中止 テトラミド(四環系)20mg(眠前) リチウム800mg→600→400→200→中止 デパケン200mg→400→600→800→1000→1200mg ワイパックス1.5〜3mg フルニトラゼハム2mg(眠前) ユーロジン2mg(眠前) リスパダール0.5ml(不安時頓服) 下剤
X+4年11月〜X+5年2月アナフラニールの量の調整をするも症状が安定しないため、ダウンした状態でアナフラニールを150mgから増やさずにジェイゾロフトを試してみることになった。50mgから開始し、100mgまで増量したところ、状態がよくなりハイの兆候もみられないため期待がもてたが、やはり1ヶ月程度でダウンしてしまい、結局再びアナフラニールを増量していかなければならなかった。その後、ジェイゾロフトは50mg→中止となり、再びアナフラニールの量の調整とともにリボトリール1→1.5→3mgに増量しながら、様子を見ることとした。 当時の投薬内容。(1日量) アナフラニール(三環系)150mg〜225mgジェイゾロフト(SSRI)眠前50mg→100mg→50mg→中止 テトラミド(四環系)20mg(眠前) リボトリール(情緒安定薬)1→1.5→3mg デパゲン(情緒安定薬)800mg ワイパックス2mg フルニトラゼハム2mg(眠前) リスパダール0.5ml(ハイテンション時) 下剤
X+5年3月〜10月 アナフラニールを200〜225mg投与するが、ふらつきなどの副作用とともに、ハイテンションが数日→落ち着きが約1ヶ月程度継続、突然ダウンが約1ヶ月というサイクルを繰り返す中、X+5年4月半ばよりデパケンを1000mg→1200mgまで増量するとともに、ルジオミールを開始して30mg→50mg→75mgと増やしながらアナフラニールを75mgまで減らしていった。しかし、1ヶ月の波はやはり変わらず、鬱状態の改善のためにアナフラニールを再び増量しなければならなかった。ハイの時には美容院に行きたがったり、多弁になったり朝早くから動き回ったりという行動がみられたが、数日で落ち着くと、思考力の低下、短期記憶ができない(すぐに忘れる)、ふらつきなどは見られるものの、家事等はふつうにでき、家族で1泊程度の旅行に行ったり買い物に出かけたりすることもできた。ダウンしたときは、日中は起きあがれずベッドで過ごすことが多くなるが、食事はきちんととれ、睡眠時間も7時間程度はとれていた。 当時の投薬内容。(1日量) アナフラニール(三環系)75mg〜225mgルジオミール(四環系)30mg→50mg→75mg テトラミド(四環系)10mg(眠前) セロクエル(気分安定薬)50→75→150mg リボトリール(情緒安定薬)3.5mg デパケン(情緒安定薬)1000→1200mg レキソタン4〜6mg フルニトラゼハム2mg(眠前→不眠時) 下剤 
X+5年11月〜X+6年3月 ふらつきがひどく度々ころぶので薬の種類を整理することになり、ルジオミール75mgと眠前に飲んでいたテトラミド10mgを徐々に減量→中止し、アナフラニールの量の調整とデパケン1200mgとリボトリール4mgで様子を見ることにした。しかし、ハイテンションが数日で落ち着くと約1ヶ月程度でダウンし、アナフラニールを1週間に25mgずつ増量していくとまた1ヶ月程度で状態がよくなり、また、アナフラニールを減らしていくとまた、1ヶ月程度でダウンするという状態は変わらず安定しなかった。1月始め、外出先の階段で転倒し、膝を数針ぬうけがをするなど、ふらつきがひどかったため、セロクエル50mgを開始するとともにデパゲンを減らし始めて様子を見ることにしたところ、ハイテンションは軽くなったが、数週間から1ヶ月でくる好不調の波は変わらなかった。それでも、ダウンの仕方がマイルドになり、また、睡眠と食欲はずっと継続してよい状態が続いていることや希死などの言動が全くなくなったのが救いだった。 当時の投薬内容。(1日量) アナフラニール(三環系)100mg〜225mg セロクエル(気分安定薬)50→75→150mg リボトリール(情緒安定薬)4mg デパケン(情緒安定薬)1200→800→600→400mg レキソタン5mg(不安時頓服) リスパダール0.5ml(不安時頓服) 
X+6年4月〜6月 アナフラニールが効果があることは間違いないが、量が多くなると軽いハイテンションやふらつきなどの副作用が出てしまい、量を減らしていくとダウンすることの繰り返しが続く中、主治医よりルボックスの投与を勧められる。3月末にアナフラニールを150mgに減らした後、いつものようにダウンしたので、4月よりアナフラニールは150mgに固定して、ルボックスを75mg→150mg→300mgと1週間ごとに増量して服用した。その後、ふらついて転ぶなどの副作用も見られたが、4月後半からややハイテンション気味となったので、アナフラニールを100→75mgと減、デパゲンも400mg→200mgと減らしたところ、徐々に落ち着いたというより、発病前に近いような表情、言動が戻ってきた。ふらつきもなくなり、短期の記憶もかなりしっかりし、車の運転も安定してできるようになった。鬱状態が改善してすでに2ヶ月がたっているが、良い状態を維持している。これまでは、アナフラニールの増量によって鬱状態が改善しても、どこかハイな部分や、思考力や性格(言動)の違和感、ふらつきなど、病的なものを無理矢理持ち上げている。
現在の投薬内容。(1日量) アナフラニール(三環系)75mg ルボックス(SSRI)300mg セロクエル(気分安定薬)150mg リボトリール(情緒安定薬)2mg(眠前) デパケン(情緒安定薬)200mg 下剤 

 補足しますが、この3年間1ヶ月程度の波を繰り返しながら、日常生活がある程度すごせるときには、普通の家族として生活し、ダウンしているときはまた必ずあがってくるのだからとやりすごしてきました。発病当時小学生と幼稚園だった2人の娘も、高校生と小学4年生になり、家内の病気を自分なりに受け止め、家内のサポートをしたり、時に怒りをぶつけたりしながらがんばり、成長したと思っています。私も「家族」というものや「幸福」というものについて、いろいろ考えながら日々をすごしてきました。今後も家族で前向きにとらえながら、家内の病気と向き合っていきたいと思います。また、主治医の先生も感謝と信頼の気持ちで、相談していこうと思っております。

林先生には、今後の治療方針についてお尋ねします。 (1)これまでの投薬経過は、治療方針として適切だったでしょうか。(2)徐々に波が小さくなってきている手ごたえはあるのですが、この先ずっと躁鬱の波は続くのでしょうか。また、波をさらに小さくするために効果が見込まれる治療はあるのでしょうか。(3)現在の投薬状況と妻の状態を考えたとき、今後も現在量を維持していくのが良いのでしょうか。それとも、徐々にアナフラニールを減らして、ルボックス単剤での投薬にもっていくべきなのでしょうか。また、ルボックス300mgという量は多すぎるということはないのでしょうか。 (4)セロクエルやリボトリール、デパケンは、現在量を維持していくのが良いのでしょうか。今後も、投薬に頼る治療が続くのはやむをえないと思いますが、一時に比べ減ってきているとはいえ、かなりの量の薬を長期間飲み続けていることに不安があります。できることなら減らしていきたいと思いますが、これまでの経過を考えると減薬することも躊躇してしまいます。どうぞ、アドバイスをお願いいたします。長文のメールをお読みくださり、ありがとうございました。


林: 決して平坦とはいえない経過ではありますが、ご家族と医師の根気強い治療・対応が功を奏し、病状は安定しつつあると思います。ご報告いただきありがとうございました。
 せっかく詳細なご報告をいただいておきながらこのような回答をするのは気がひけますが、ご質問の(1)から(4)のいずれにも私はお答えすべきでないと思います。理由は【1397】にもお書きした通り、このような経過での薬物療法はかなり微妙な調整を要しますので、メールの情報だけから何らかの意見を述べるのは不適切と思われるからです。症状に応じて調整を続けるという主治医の先生の方針に従うのが最善です。主治医以外のいかなる人物にも意見を求めることは勧められません。主治医の先生は奥さまの病状を誰よりも深く把握されており、念入りに治療をしておられるわけですから、その他の意見はすべて雑音と考えるべきです。




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