精神科Q&A
【1779】60代の父は軽い発達障害でしょうか
Q: 29歳の女性です。60代の父親が軽い発達障害なのではないかと思いご質問させていただきます。そう思う主な理由は以下のものです。 挨拶がろくにできない 手洗いや体を洗うなどが言われないとやらない 病気の家族を放っておくなど、情緒的交流がなく、人の気持ちが分からない 人が傷ついたり非常識だと思う内容の言動を平気でする 質問されたから答えたのにリアクションがなく会話が途切れる 人の話を聞いていない(質問に答えが返ってこない時がある) 自分の話に酔っている メールで会話してもちぐはぐなやりとりになる ちょっとした急なことに対応できずオロオロする ちょっとした指摘(手を洗ってなど)に激高する 1日に同じことを何回も繰り返し話す(確認するときや怒っているときなど) 強迫性障害の診断歴があるらしく(この辺はあまり教えてくれない)、確認行為が多い 被害妄想と思い込みが激しい 近所の人に変人扱いされている かなりのオタクでそのジャンルでは評価される 仕事など毎日やると決まっていることは真面目にやる 親が鬱で自殺、甥がボーダーラインで自殺 娘(私)が躁鬱。父は昔からこうなのですが、性格だと思っていました。最近発達障害についての記事を目にすることが増え、気になりはじめました。ぜひ専門家の方のご意見が聞きたいです。よろしくお願いいたします。
林:
父は軽い発達障害でしょうか
わかりません。
質問者がお父様を軽い発達障害ではないかと思う理由として挙げられている内容は、確かに広汎性発達障害の特徴に一致しています。けれどもこのメールの記載は抽象的で、診断のための情報としてはほとんど意味がありません。なぜならこうした特徴は、ある程度までは多くの人にあるものですので、具体的な内容の記載がなければ、正常範囲なのか障害のレベルなのか判断できないからです。「具体的な内容の記載」とはどの程度のものをいうかについては、発達障害の他のケースの描写をご参照ください。
もし抽象的な特徴だけで診断すると、【1523】の質問文の医師のような重大な誤診になります。
もうひとつの問題は、仮に具体的な情報が書かれていて、「軽い発達障害」と思われたとしても、ではその「軽い」発達障害とは何か、そのように診断することに何の意味があるのかということが指摘できます。「軽い障害」とは、個性と紙一重か、あるいは個性そのものにすぎず、特にこの【1779】のケースは60代ですので、「軽い障害」と診断をつけたところで誰にとっても何のプラスにもならず、単なるレッテル貼りにすぎないといえるでしょう。
父は昔からこうなのですが、性格だと思っていました。最近発達障害についての記事を目にすることが増え、気になりはじめました。
こうしたことは最近では多くなりました。発達障害について、さらには心の病すべてについて、情報がバブルのように膨れており、そこにはプラスもマイナスもあります。この【1779】は、性格だと認識され続けていたほうがいいケースかもしれません。