精神科Q&A
【1752】醜形恐怖症の娘が、妄想性障害と診断されたが、治療を拒否している
Q: 私は60歳の父親です。現在23歳になる娘ですが、1年と少し前に、目が気になるといって整形手術を受けました。その後段々と鏡を見るようになり目がずれていると言うようになりました。他人からみるとずれているようには見えないのですが本人はそれが非常に気になるらしく、ため息をついたり暴言をはいたり、壁を蹴飛ばしたりするようになりました。インターネットで醜形恐怖症のことを知り、半年前に精神科に行き診断を受けたところ妄想性障害という病名でした。その後さらに状態が悪化し、診断の2ヶ月後に会社を休職し医療保護入院しましたが、閉鎖病棟という環境や入院している人の様子をみて本人が強行に退院したいと申し出て1日で退院してしまいました。
その後精神科の先生からは止められていたのですがまた整形を行ってしまいました。整形後はハイな状態になり本人はある程度満足した様子で化粧や友達とのつきあいを頻繁にするようになり会社も復帰しました。しかしながら鏡を見るのは直りませんで、ますます暇さえあれば見るという状況で、その後1ヶ月ぐらいたつ頃からまた目がずれていると言いだしました。現在は過食嘔吐を繰り返し、会社へは行きたくないと言っております。病院へは一時よくなった時から予約はしていましたが行っておりませんでした。最近状態がひどくなったのでまた連れていきました。先生からは何種類かの薬を処方していただいていますが、本人は薬を自分のほしいもの(睡眠薬)だけ飲んでおります。本人の意識としては自分は病気ではなく昨年行った整形手術が失敗だったため目がずれてしまったのだと思いこんでいます。最近は大声を出したり、悪態をついたり、親を憎むようなことを言っております。このまま行くとさらに悪化の一途をたどるように思えます。また、整形を再度行いたいとも言っております。こちらとしてはどのように対応したらよいのか分からない状況です。整形は絶対やめさせるべきでしょうか。また再度入院させるべきでしょうか。
林: 醜形恐怖は、文字通り醜形恐怖の症状だけが持続する場合もあれば、統合失調症の初期症状の場合もあります。また、この【1751】でそう診断されたように、妄想性障害の一型とみなしたほうがいい場合もあります。予後 (つまり、よくなるかどうか) はケースによって様々ですが、この【1751】では妄想性障害としていったんは入院されたわけですから、まずは薬物療法に期待するのが正当な考え方です。一日で退院されてしまったのはその期待できる治療が開始されなかったという意味で残念なことですが、
閉鎖病棟という環境や入院している人の様子をみて本人が強行に退院したいと申し出て1日で退院してしまいました。
この文章をそのまま読むとご本人から退院してしまったと読み取れますが、このときは医療保護入院であり、質問者であるお父様が保護者であったと推察されますので、退院させたのは質問者の意思であったはずで、したがって現在の状態を招いたのは質問者の責任が大きいと言わざるを得ません。あるいは複雑な事情があったのかもしれませんが、娘さんは病気であり、治療の機会を逃したという事実はいかなる事情があったにせよ否定できません。
このまま行くとさらに悪化の一途をたどるように思えます。
その通りです。
また、整形を再度行いたいとも言っております。こちらとしてはどのように対応したらよいのか分からない状況です。整形は絶対やめさせるべきでしょうか。
やめさせるべきです。
また再度入院させるべきでしょうか。
入院させるべきです。娘さんのことを真にお考えになるのであれば、質問者である父親には、毅然とした姿勢が望まれます。次の入院も前回の入院のときのようなことになれば、もう未来はないでしょう。