精神科Q&A
【1725】ここ数ヶ月認知症が進んだようにみえる71歳の義父が急に歩けなくなった
Q: 71歳の義父の事で相談いたします。 18年前にくも膜下出血で倒れました。当時は会社の役員であり、次期社長も噂されていたほどですが、病気により降格になりました。(体の右側に後遺症がありますが、ゆっくり字を書いたり、足をひきずりながらの歩行は出来るようになりました。)その後は酒量が増え、たびたび酒の上で失敗をすることが多くなり、退職してからは、アルコール依存症のような状態を数年続けてきました。
それでも、自分で買い物をしたり、お料理教室に通ったり、庭の手入れ等をしていましたが、ここ数カ月は自宅でぼーっとしていることが多くなりました。買い物を頼んでも、違うものを買ってきたり、毎日同じ食材を買ってきたりという事が増え、電話の取次も訳が分からない状況だったので、介護認定を受けましたが、要支援1という結果でした。 以前は放っておくとウォッカを1本空けてしまう程でしたが、ここ最近は週に1,2回位しか飲まないようです。 今朝になって、午後位まで吐き気が収まらず、ずっと横になっていました。頭痛や熱はなかったのですが、夕方になって、起きたところ、歩行困難で、立ち上がるとふらついてしまい、トイレに行くにも誰かが支えていないとダメです。 昨日にステーキを多めに食べたとの事ですが、単なる消化不良なのか、脳梗塞のようなものなのか、内科が主治医なのですが、どこに行ったらいいのでしょうか? 来週、脳のCTを撮ることになっていますが、ここ数カ月で認知症の症状が酷くなったように思い、世話をしている義母が参っています。今後、どのような経過をたどることになるのでしょうか?
林: くも膜下出血が、どの程度のものであったか、また、直前の飲酒状態がどのようなものであったか、さらには、身体的な障害はどの程度であったか(数年間の大量飲酒がありますので、複数の臓器に障害があると推定されます)、これらによって、考えられる病気は違ってきます。現在の症状の原因推定のために最低でも必要なものは脳の画像所見と、血液検査所見です。これらがない限り、ほとんど何もわかりません。
仮に直前にかなりの飲酒があったとすれば、また、食事もきちんと摂っていなかったとすれば、ウェルニッケ脳症が考えられます。ウェルニッケ脳症は、多くは飲酒に伴うビタミンB1の欠乏が原因で、早急に治療しないと生命の危機に直結します。また、回復しても記憶障害を中心とするコルサコフ症候群という後遺症を残すことがしばしばあります。
退職してからは、アルコール依存症のような状態を数年続けてきました。
これだけの記載なので詳細不明ですが、この時期に飲酒を続けたことが、この方の生活レベルを著しく下げ、さらには生命を縮めることにつながったと判断するのが妥当だと思います。