精神科Q&A
【1712】私がアスペルガーだなんて、一生認めてやりません
Q: 私は二十代の女です。家族が私抜きで心療内科に相談をしたところ「アスペルガー障害」だと診断されたと言われました。ですが事実関係は私が診療を受けていないためわかりませんし、第一、認める筋合いも無いと思っています。 確かに小さなころから友達を作るのも苦手で、現在も人間関係を長続きさせたりするのは難しいです。会社からは当たり前のことをしろと言われますがその当たり前が何なのかわかりませんし、気遣いも出来ません。協調性に関しては、正直言って他人に興味が持てません。こだわりについては確かに好きなものにはこだわるかもしれない。 ですが それの何処が悪いんですか? 意味がわかりません。人と人は違うんだから、こういう性格もあって当たり前だと思います。大体アスペルガーだの障害者だの言われたくありません。一生認めてやりません。病院にもいかない。大体、本人の私が受診してないのにアスペルガー障害って診断できるわけない。こんな私、間違っていますかね? 診療は周囲が迷惑だと感じるなら受けたほうがいいんですかね? あまりに世の中生きづら過ぎて最近は感情のコントロールですら出来なくてパニックになります。人からキチガイとか言われます。だけど私はキチガイなんかじゃない。 もうどうしたらいいのかわかりません。病院に行きたくないけど行かないとヤバイ気もするし、でも行かない。アスペルガーの診療の必要性なども教えてください。 よろしくお願いします。
林: あなたがアスペルガーかどうか、このメールの情報からは何ともいえません。症状(かもしれない)ものとして具体的に書かれているのは
確かに小さなころから友達を作るのも苦手で、現在も人間関係を長続きさせたりするのは難しいです。会社からは当たり前のことをしろと言われますがその当たり前が何なのかわかりませんし、気遣いも出来ません。協調性に関しては、正直言って他人に興味が持てません。こだわりについては確かに好きなものにはこだわるかもしれない。
これだけで、これらは確かにアスペルガー障害の特徴ではあっても、障害といえるレベルのものかどうかが、これだけの記載ではわかりません。単なる性格の範囲かもしれません。
しかし一方、医師からアスペルガー障害という示唆があったことは、軽視すべきではありません。
大体、本人の私が受診してないのにアスペルガー障害って診断できるわけない。
確定診断についてはその通りですが、アスペルガー障害の診断は、現在の症状が重要なことはもちろんですが、これまでの発達の過程がどうであったかということも、同じくらいか、時には現在の症状以上に重要です。ですから、お母様が、あなたの成長過程をよく観察してきた人であって、それを正確に医師に伝えることができる人であれば、本人を診察しなくても、お母様の話を聞いただけでもある程度までの診断は可能です。これはアスペルガー障害に限らず、発達障害全般についてもいえることです。
ただし本人を診察しないで確定的に診断することまでは普通はできません。
家族が私抜きで心療内科に相談をしたところ「アスペルガー障害」だと診断されたと言われました。
とお書きになっていますが、本当に「診断された」のでしょうか。
一般的にいって、
「医師がこう言ったとAが言ったとBが言っている」
という情報は、ほとんどの場合ゆがんでいて、正確なものではありません。
このケースでいえば、
「医師が、Bさんはアスペルガー障害と診断した と、A(家族)が言っているとB(質問者)が言っている」
という形ですので、この情報に厳密さはないとみるべきでしょう。
つまり、この医師があなたをアスペルガー障害であると、
確定的に診断したのか、
その診断名の可能性が高いと言ったのか、
その診断名の疑いがあると言ったのか、
その診断名を否定できないので診察を受けたほうがいいと言ったのか。
これらはかなり意味が違いますが、上のように間接的な情報の伝わり方をすると、「医師が〜と診断した」という話になっていることが多いものです。
それにあなたはアスペルガーという言葉を聞いて大変感情的になっていますので、このメールの内容にはかなり不正確な部分があるとみるのが自然です。
すると、おそらくは事実とみていい部分は、
1. 家族が相談した医師が、あなたについて、アスペルガー障害を示唆したこと
2. あなたにはアスペルガー障害の特徴に一致した性格傾向があること
3. 今あなたは怒っていること
だけということになります。
すると回答は限られてきます。以下の通りです。
あなたがアスペルガー障害という診断名を聞いて、ショックを受けていることはよくわかります。けれども、まだアスペルガー障害かどうかもわからない段階ですから、病院に行く・行かないということを含め、何かを決めるのは早すぎます。ショックを受けたという自分の気持ちを見つめるとともに、事実がどうであるか、まずそれを見つめるようにしてください。何かを決めるのはそれからです。
上の3.に書いたとおり、このメールの文章は怒りにあふれた感情的なものですが、その一方、こうしてメールをお書きになっていることから、
4. 第三者に相談しようという冷静さは持っている
ということも読み取れます。これからはその冷静さのほうを拡大してください。