精神科Q&A
【1706】躁状態になった母。うつになって薬を飲んでくれるのを待つしかないでしょうか。
Q: 60代の母の事で相談させていただきます。 今から２年前くらいに、「眠れない。楽しくない。辛い。」という事を口にするようになったので、クリニックの受診をすすめました。そこで「うつ病」と診断されました。私は、結婚して家を出ているので、どういう種類の薬を飲んだか、薬の量などもわかりませんが、4カ月前(春)に、主治医から「もう、薬を飲まなくて大丈夫でしょう」と言われたらしく、薬をやめました。 ところが、それから一カ月もたたないうちに、電話で早口で２時間も興奮して日常のささいな事をしゃべり続けたり、ささいな事で攻撃的に怒鳴るようになりました。私は、主人の転勤があり、実家とは遠く離れて住んでいるのですが、一緒に暮らしている父が、母の猛攻撃にあっているようです。 電話で父に聞いたところ、「次々と用事を言いつけて、命令口調で指示する。ちょっとでも気に入らない事があると、大声で怒鳴りつける。昔の友達を探しあてて、次々と会っている。長年の友達や趣味のサークルの場でも、ケンカをしトラブルになっている。人に道を尋ねるのも、命令口調で、相手を怒らせてしまう。」ということです。父は、毎日、母から怒鳴られ、「毎日、楽しくない。もう、この場から逃げたい。早く死にたい。」と言っています。 私は、本などで調べて、躁病の症状にぴったりあてはまると思い、本に書いてあったように、相手を怒らせないように、電話で母に「お母さん、最近よく眠れてる？イライラしてない？」など優しく受診をすすめてみたのですが、ものすごい暴言を吐かれて、電話を切られてしまいました。 本人いわく、「私が２年間、うつでどれだけ辛い思いをしてきた事か！それが、もう治ったの！薬を飲まなくていいの！余計な事を言わないで！！私は毎日楽しくてしょうがないの！！」と。友達とケンカしたり、父を罵ったり、あちこちでトラブルになっている事は一切言わず、そんななのに、毎日楽しくってしょうがないって・・・。 父は、「僕がこんな話をしたなんて絶対言わないで」と言います。私に言いつけた事で、また母から怒鳴られるのを本当に恐れています。父は、「がまんするしかない」と耐えています。私も病院に行ってほしいけど、今のこの状況ではとても無理なので、秋くらいにまた「うつ」になるのを待つしかないと思っています。（私は遠く離れて住んでいる上に、小さい子供もいるし、あんなに興奮している人を病院に連れて行くのは無理です） 長々すみません。質問ですが、１．母は、やはり躁状態になっているのでしょうか？２．秋頃には「うつ」になって、薬を飲んでくれるでしょうか？ 本当は、病院に行ってほしいです。薬を飲んで落ち着いて、父を楽にしてほしいです。放置がよくないという事はよくわかっています。放置してその後の「うつ」が重くなるのも避けたいんです。そんな家族の思いも届かず、「自分は正常だ！」という母。躁うつ病・・・大変で難しい病気なんですね。。。 わかりにくい文章ですみません。よろしくお願いします。
林:
１．母は、やはり躁状態になっているのでしょうか？
そうです。診断はうつ病ではなく、躁うつ病です。そして今は躁うつ病の躁病相(躁状態)です。
２．秋頃には「うつ」になって、薬を飲んでくれるでしょうか？
わかりません。第一に、秋頃にうつになるかどうかがわかりません。第二に、うつになったとしても、薬をお飲みになるかどうかはわかりません。
したがって、いま受診して薬による治療を開始するのが最善ということになります。
もっとも、質問者はそんなことは百も承知でこの質問をしておられるのでしょう。次のようにも書いておられます。
私も病院に行ってほしいけど、今のこの状況ではとても無理なので、秋くらいにまた「うつ」になるのを待つしかないと思っています。（私は遠く離れて住んでいる上に、小さい子供もいるし、あんなに興奮している人を病院に連れて行くのは無理です）
「今のこの状況ではとても無理」とおっしゃる以上、実際にこの方を診ていない私は、「そうですか」とお答えするしかありません。そして、「秋まで待ってみるしか仕方ないですね。そうすれば、うつになるかもしれません。うつになれば、薬を飲んでくださるかもしれません」とお答えするべきかもしれません。もちろんその通りになるかもしれません。しかしこれは明らかに希望的観測です。その通りになる率が高いと予想する根拠は全くありません。秋になる前に躁状態が悪化して、取り返しのつかないことになるという悪い予想も、同じように成り立ちます。
本当は、病院に行ってほしいです。薬を飲んで落ち着いて、父を楽にしてほしいです。
そのお気持ちはよくわかります。しかしそれを私に言って何になるのでしょうか。私が質問者に同情したところで、何もなりません。
この質問者の方は「病院にはとても連れていけない」という結論が前提としてあって、そこに希望を見出すために、あるいは、その結論を正当化するために、「秋になればうつになる」「うつになれば薬を飲んでくれる」という根拠薄弱な推定にすがっているのではないでしょうか。もう一度ご自分を振り返ってお考えください。そして、本当に「病院に行ってほしいけど、今のこの状況ではとても無理」なのかどうか、よくお考えのうえ、どうするかをお決めください。