精神科Q&A

精神科病院外来における無告知投薬の現状
森山他 著 精神医学 40巻5号 517-524 1998年


タイトルの通り、無告知投薬の実情を調査した論文です。
調査は一民間病院において行われたもので、これが日本の現状を反映しているとは言えませんが、それはともかくとして結果は、外来患者の約1%に行われており、内訳は、統合失調症への抗精神病薬と、アルコール依存症への抗酒薬が6:4となっています。
この現状をどう見るか。単純なコメントは避けたいところで、興味ある方は原文を入手してお読みください。ここでは、この論文の「おわりに」を引用するにとどめます:

「無告知投薬を不必要とするような治療の場を、臨床的に醸成するのが理想であるのは論をまたない。しかし、インフォームド・コンセントそのものが成立しにくい条件下で、あるいは、将来の通常投薬が可能になる時期を視野に入れた次善の策として、無告知投薬が行われているのも事実である。その際、おおかたの治療者や家族が、熟考の果てにそれを選択しているのが現状と言える。無告知投薬に手を染める臨床医を「medicine man」になぞらえるのは自由である。しかしそれを蔑称として貶めるのであれば、極めて自文化中心的な見解であることを自覚しなければなるまい。なぜならmedicine manは、それぞれの地域伝統社会で有意義な治療的役割を全うとしているのだから。」




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